日本の外食産業では、人手不足が大きな課題となっており、外国人材の活躍が期待されています。
在留資格「特定技能」では外食業も対象分野となっており、一定の技能や日本語能力などの要件を満たした外国人が、飲食店などで調理、接客、店舗管理等の幅広い業務に従事することができます。外食業分野では「特定技能1号」に加えて「特定技能2号」も設けられており、一定の要件を満たせば、より長期的に日本で働くことも可能です。
一方、特定技能1号「外食業分野」では受入れが急速に増加し、現在は受入れ見込数を踏まえ、新規受入れについて停止措置が実施されています。これから外食業分野で特定技能外国人の採用を検討する企業は、通常の受入れ要件だけでなく、現在の申請制限についても確認しておく必要があります。
この記事では、特定技能「外食業分野」の仕事内容、取得要件、採用の流れ、受入れ企業の要件・注意点、現在の受入れ状況について解説します。
特定技能「外食」とは
「特定技能」は、人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人材を受け入れるために設けられた在留資格です。
外食業も特定技能の対象分野の一つであり、レストラン、食堂、ファストフード店などの飲食店において、飲食物の調理、接客、店舗管理などの業務に従事することができます。
外食業分野には「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。
特定技能1号
特定技能1号は、外食業について「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を有する外国人が対象です。
原則として、外食業特定技能1号技能測定試験と、日本語能力を確認する試験に合格する必要があります。
主な特徴は次のとおりです。
◇ 在留期間は通算5年が上限
◇ 家族(配偶者・子)の帯同は原則として認められない
◇ 1号特定技能外国人支援計画に基づく支援が必要
◇ 一定の要件を満たせば転職も可能
受入れ企業自身で必要な支援を実施することが難しい場合は、登録支援機関へ支援の全部を委託することもできます。
特定技能2号
特定技能2号は、特定技能1号よりも高い技能水準を有する外国人を対象とした在留資格です。
外食業分野では、外食業特定技能2号技能測定試験への合格に加え、日本語能力試験(JLPT)N3以上が必要です。
また、飲食店において複数の従業員を指導・監督しながら作業に従事し、店舗管理を補助する者としての実務経験も必要となります。
例えば、副店長、サブマネージャーなどとして、接客等の業務に加え、従業員への指導や店舗運営を補助する経験などが想定されています。
特定技能2号では、
◇ 在留期間の更新回数に上限がない
◇ 要件を満たせば配偶者・子の帯同が可能
という特徴があります。
そのため、特定技能1号から2号へ移行できれば、外国人本人だけでなく、受入れ企業にとっても長期的な雇用につながる可能性があります。
特定技能「外食」で就労できる職種

特定技能「外食」では、外食業全般の業務に従事することができます。
主な業務は、「飲食物調理」「接客」「店舗管理」です。
飲食物調理
客に提供する飲食物の調理、調製、製造などの業務です。
例えば、
◇ 食材の仕込み
◇ 加熱調理
◇ 非加熱調理
◇ 調味
◇ 盛り付け
◇ 飲食物の調製
などが該当します。
接客
客に飲食物を提供するために必要となる接客業務です。
例えば、
◇ 客の案内
◇ 注文受付
◇ メニューの説明・提案
◇ 料理や飲み物の配膳
◇ 会計
◇ 予約受付
◇ 店内の清掃
などが該当します。
店舗管理
店舗を運営するために必要となる管理業務です。
例えば、
◇ 店舗内の衛生管理
◇ 従業員のシフト管理
◇ 従業員への指導・研修
◇ 求人・雇用に関する事務
◇ 売上管理
◇ 店舗設備や備品の管理
などが該当します。
特定技能外国人は、これら外食業全般の業務に幅広く従事することができます。
ただし、風俗営業法上の「接待」に該当する業務に従事させることはできません。
また、特定技能外国人を受け入れる場合は、実際に従事する業務が外食業分野の対象となる業務に該当しているかを事前に確認することが重要です。
取得要件

特定技能1号「外食」の在留資格を取得するには、外国人本人が技能水準、日本語能力などの要件を満たす必要があります。
試験への合格外食業特定技能1号技能測定試験
原則として「外食業特定技能1号技能測定試験」に合格する必要があります。
この試験では、外食業で働くために必要となる、
◇ 衛生管理
◇ 飲食物調理
◇ 接客全般
などについて、一定の知識・技能を有していることが確認されます。
ただし、現在は外食業分野の特定技能1号について新規受入れの停止措置が実施されていることに伴い、外食業特定技能1号技能測定試験についても、国内・国外ともに当面の間実施しないことが案内されています。
今後、試験が再開される可能性もあるため、最新の試験情報を確認する必要があります。
日本語能力試験
特定技能1号では、外食業の技能だけでなく、日本で働き生活するために必要となる日本語能力も求められます。
原則として、次のいずれかに合格する必要があります。
◇ 本語能力試験(JLPT)N4以上
◇ 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
外食業では、調理だけでなく、客への接客や従業員同士のコミュニケーションなども必要になるため、日本語能力は実際の就労においても重要となります。
技能実習2号からの移行
一定の技能実習2号を良好に修了した外国人については、試験の一部または全部が免除される場合があります。
「医療・福祉施設給食製造」の技能実習2号を良好に修了している場合は、技能水準を満たしているものとして、外食業特定技能1号技能測定試験が免除されます。
また、技能実習2号を良好に修了している場合は、職種・作業にかかわらず、原則として日本語試験が免除されます。
ただし、技能実習から特定技能へ変更できるかについては、技能実習の職種・作業や修了状況などを個別に確認する必要があります。
その他
試験以外にも、特定技能外国人本人について一定の要件があります。
例えば、
◇ 原則として18歳以上であること
◇ 健康状態が良好であること
◇ 保証金を徴収されていないこと
◇ 違約金を定める契約を締結していないこと
など、特定技能制度で定められた基準を満たす必要があります。
外国人本人が試験に合格しているだけで、特定技能の在留資格が認められるわけではありません。
外国人本人、雇用契約、受入れ企業、支援体制など、それぞれについて要件を満たしていることが必要です。
採用の流れ
特定技能「外食」の外国人を採用する場合は、外国人本人の要件だけでなく、受入れ企業の要件や協議会への加入などについても確認しながら手続きを進めます。
一般的には、次のような流れになります。
1.求人・人材の選定
特定技能「外食」の要件を満たす外国人を探します。
海外にいる外国人を採用する方法のほか、日本国内に在留している外国人を採用する方法もあります。
外国人本人が技能試験・日本語試験などの要件を満たしているか、現在の在留資格や在留期間なども確認します。
2.面接・採用決定
外国人と面接を行い、業務内容、勤務場所、給与、労働時間などについて確認したうえで採用を決定します。
海外にいる外国人の場合は、オンラインで面接を実施することもあります。
3.特定技能雇用契約の締結
採用する外国人が決まったら、受入れ企業と外国人との間で特定技能雇用契約を締結します。
報酬額、労働時間、休日、業務内容、勤務場所などの労働条件を明確にする必要があります。
特定技能外国人の報酬額は、同程度の業務に従事する日本人と同等以上でなければなりません。
4.食品産業特定技能協議会への加入
外食業分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、「食品産業特定技能協議会」への加入が必要です。
現在は、出入国在留管理庁へ在留諸申請を行う前に協議会へ加入しておく必要があります。
協議会への加入申請から審査完了まで一定の期間を要するため、外国人の採用が決まってから慌てて手続きを始めるのではなく、余裕を持って準備することが重要です。
5.1号特定技能外国人支援計画の作成
特定技能1号の外国人を受け入れる場合は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成します。
主な支援には、
◇ 事前ガイダンス
◇ 出入国する際の送迎
◇ 住居確保、生活に必要な契約の支援
◇ 生活オリエンテーション
◇ 公的手続等への同行
◇ 日本語学習の機会の提供
◇ 相談・苦情への対応
◇ 日本人との交流促進
◇ 転職支援(人員整理等の場合)
◇ 定期的な面談
などがあります。
受入れ企業自身で適切な支援体制を整えることが難しい場合は、支援の全部を登録支援機関へ委託することができます。
6.在留資格の申請
必要な準備が整ったら、地方出入国在留管理局へ在留資格の申請を行います。
海外から新たに外国人を呼び寄せる場合は、原則として「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
すでに日本に在留している外国人が他の在留資格から特定技能へ移行する場合は、「在留資格変更許可申請」を行います。
また、特定技能として在留している外国人について、引き続き在留する場合は「在留期間更新許可申請」が必要です。
ただし、現在、外食業分野の特定技能1号については、新規受入れに関する停止措置が実施されています。
そのため、現在は通常の採用手続きを進める前に、予定している申請が現在の停止措置の対象になるかを確認することが特に重要です。
受け入れ企業の注意点

特定技能外国人を採用するためには、外国人本人だけでなく、受入れ企業(特定技能所属機関)についても一定の基準を満たす必要があります。
食品産業特定技能協議会への加入
外食業分野の特定技能外国人を受け入れる企業は、農林水産省が設置する「食品産業特定技能協議会」への加入が必要です。
現在は、在留諸申請を行う前に協議会へ加入する必要があります。
加入手続きには一定の期間を要するため、早めに準備する必要があります。
適切な雇用形態
外食業分野では、特定技能外国人は受入れ企業が直接雇用する必要があります。
派遣会社から外国人の派遣を受けて就労させる形態は認められていません。
また、所定労働時間についても、通常の労働者と同等であることなど、特定技能雇用契約に関する基準を満たす必要があります。
報酬
特定技能外国人の報酬額は、同程度の業務に従事する日本人労働者と同等以上でなければなりません。
外国人であることを理由に低い給与を設定することは認められていません。
基本給だけでなく、手当などを含め、同等の経験・業務内容を持つ日本人従業員との比較が必要になる場合があります。
労働・社会保険・租税関係法令等の遵守
受入れ企業には、労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令などを遵守していることが求められます。
特定技能外国人本人に問題がなくても、受入れ企業側に法令違反などがある場合には、受入れが認められない可能性があります。
非自発的離職者を発生させていないこと
特定技能外国人を受け入れるために、同種の業務に従事している日本人などを会社都合で退職させることは認められていません。
一定期間内に非自発的離職者が発生している場合には、その内容や理由について確認が必要となります。
支援体制の整備
特定技能1号の外国人を受け入れる場合は、外国人が日本で安定して働き、生活できるよう、必要な支援を適切に実施できる体制を整える必要があります。
受入れ企業自身で支援を行う場合は、支援責任者・支援担当者の選任など、法令上の基準を満たさなければなりません。
要件を満たすことが難しい場合には、登録支援機関へ支援の全部を委託する方法があります。
キャリアアップ
外食業分野では、受入れ企業が外国人本人に対してキャリアアッププランを提示することが求められています。
特定技能1号として単純に人手不足を補うだけではなく、外国人が経験を積み、技能を向上させていくことも制度上重視されています。
特定技能2号への移行も含め、将来的なキャリア形成を考えた雇用・育成を行うことが重要です。
外食業分野の受入れ上限と新規受入れ停止
現在、外食業分野で特定技能1号外国人の採用を検討する場合に、特に注意しなければならないのが「新規受入れの停止措置」です。
外食業分野の特定技能1号については、2024年度から2028年度までの5年間の受入れ見込数が「5万人」とされ、この人数を上限として運用されています。
その後、外食業分野の特定技能1号外国人が急速に増加し、2026年2月末時点の在留者数が約4万6,000人となりました。
さらに、すでに申請中の案件などを考慮すると、2026年5月頃には受入れ見込数5万人を超えることが見込まれたため、出入国在留管理庁は2026年4月13日から新規受入れに関する停止措置を実施しています。
そのため、「すでに5万人を超えたからすべての申請ができない」という単純な取扱いではなく、申請の種類や外国人の状況によって取扱いが異なります。
2026年9月現在の主な取扱いは、次のとおりです。
在留資格認定証明書交付申請
海外から新たに特定技能1号「外食業」として外国人を受け入れるための在留資格認定証明書交付申請については、2026年4月13日以降に受理された新規申請は、不交付となる取扱いが案内されています。
したがって、現在、新たに海外から特定技能1号「外食業」として外国人を呼び寄せることは原則としてできない状況です。
他の在留資格からの変更申請
留学など、他の在留資格で日本に在留している外国人が、特定技能1号「外食業」へ変更する在留資格変更許可申請についても、2026年4月13日以降に受理された申請は原則として不許可となる取扱いが案内されています。
そのため、日本国内にいる外国人であれば通常どおり外食業の特定技能1号へ変更できる、という状況ではありません。
外食業分野内での転職
すでに特定技能1号「外食業」として在留している外国人が、別の外食業分野の企業へ転職する場合の在留資格変更許可申請については、通常どおり審査されています。
したがって、今回の停止措置は、現在外食業で働いている特定技能外国人の転職そのものを禁止するものではありません。
在留期間更新許可申請
すでに特定技能1号「外食業」として適法に在留している外国人の在留期間更新許可申請についても、通常どおり審査されています。
ただし、特定技能1号の在留期間は原則として通算5年が上限であることに注意が必要です。
一部の例外的な取扱い
技能実習「医療・福祉施設給食製造」から外食業分野へ移行する場合や、すでに「特定活動(特定技能1号への移行を希望する場合)」で在留している場合などについては、一般的な新規受入れとは異なる取扱いが示されています。
したがって、現在の外食業分野では、「特定技能1号の申請がすべて停止されている」と考えるのではなく、外国人の現在の在留資格、申請の種類、これまでの在留状況などを確認したうえで判断する必要があります。
また、この停止措置は今後の受入れ状況などによって変更される可能性があります。
外食業分野で外国人の採用を検討する場合は、出入国在留管理庁や農林水産省が公表する最新情報を確認することが重要です。
まとめ
特定技能「外食」は、一定の技能・日本語能力を有する外国人が、飲食店などで飲食物調理、接客、店舗管理等の幅広い業務に従事できる在留資格です。
特定技能1号では、原則として技能試験と日本語試験への合格が必要となり、受入れ企業についても、適切な雇用契約の締結、食品産業特定技能協議会への加入、1号特定技能外国人に対する支援など、さまざまな要件があります。
また、外食業では特定技能2号も設けられており、試験、一定の日本語能力、店舗管理を補助する実務経験などの要件を満たすことで、特定技能1号から2号への移行を目指すこともできます。
一方、外食業分野の特定技能1号については、受入れが大幅に増加し、2024年度から2028年度までの受入れ見込数5万人を超えることが見込まれたことから、2026年4月13日より新規受入れの停止措置が実施されています。
現在は、海外からの新規受入れや他の在留資格から特定技能1号「外食業」への変更は原則として難しい一方、すでに外食業分野の特定技能1号で在留している外国人の在留期間更新や、外食業分野内での転職などについては通常どおり審査されています。
このように、現在の外食業分野では、外国人本人や受入れ企業の通常の要件に加えて、「どのような申請を行うのか」によって取扱いが大きく異なります。
特定技能「外食」で外国人の採用や在留資格申請を検討する場合は、最新の制度や申請状況を確認したうえで手続きを進めることが重要です。
※本記事は2026年9月時点の制度・運用に基づいて記載しています。
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所では、名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県を中心に、特定技能の在留資格申請をサポートしています。海外から特定技能外国人を採用する場合の在留資格認定証明書交付申請(COE)をはじめ、在留資格変更、在留期間更新、特定技能2号への変更など、受入れ企業の状況に応じて必要な手続きや申請の進め方をご案内します。ご依頼をご検討の企業様は、上記よりお問い合わせください(初回面談は無料です)。
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