「技能実習」から「特定技能」への切り替えは、日本の人手不足解消において非常に重要なルートとなっており、現在の特定技能在留外国人のうち約6割(2024年6月末時点)がこの「技能実習ルート」を利用しています。
ここでは、「技能実習」から「特定技能」へ切り替えるための条件、手続きの流れ、そして最新法令として創設された「育成就労制度」が将来的に移行に与える影響について説明します。
技能実習と特定技能の制度比較
両制度は、外国人が日本で働くための在留資格ですが、その目的と在留条件が大きく異なります。技能実習は「国際貢献」(学び中心)を目的とする一方、特定技能は「人手不足の解消」(働き中心)を目的としています。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能1号 |
| 制度目的 | 技術移転による国際貢献(人材育成) | 国内の人手不足解消(労働力確保) |
| 在留期間 | 最長5年(1号、2号、3号の合計) | 通算で最長5年(更新要) |
| 転職・転籍 | 原則不可 | 同一分野内で可能 |
| 家族帯同 | 不可 | 原則不可(2号は可能) |
| 人数制限 | あり(常勤職員数による) | なし(介護・建設分野除く) |
| 必要支援 | 監理団体による監理 | 登録支援機関等による義務的支援 |
特定技能1号へ移行するための要件(現行制度)
技能実習から特定技能1号へ移行するためには、原則として、通常特定技能の取得に必要とされる技能試験と日本語試験が免除される条件を満たすことが最もスムーズです。
移行の基本条件は以下の2点です。
◇ 技能実習2号を良好に修了していること。
◇ 技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること。
良好な修了と試験の免除
「良好に修了している」とは、技能実習を2年10ヶ月以上修了し、かつ技能検定3級またはそれに相当する実技試験に合格しているか、または実習実施者による評価調書等で良好な修了が認められる状態を指します。
| 技能実習の内容 | 技能試験 | 日本語試験 | 備考 |
| 良好に修了 + 関連職種 | 免除 | 免除 | 最もスムーズな移行ルートです。 |
| 良好に修了 + 異なる職種 | 合格が必要 | 免除 | 進みたい分野の技能試験のみ受験が必要です。 |
※技能実習1号(1年目)からの特定技能への移行は認められていません。
技能実習2号と3号の移行要件の違い
特定技能への移行にあたっては、技能実習2号と3号では、移行できるタイミングが異なります。
| 技能実習の区分 | 移行の時期/条件 | 備考 |
| 技能実習2号 | 実習計画を2年10ヶ月以上修了(満了)していること。 | 実習期間の途中で特定技能1号へ変更することはできません。 |
| 技能実習3号 | 実習計画を「中止」した上で移行が可能。または実習計画を満了。 | 既に2号を良好に修了しているため、3号の途中でも、実習計画を中止すれば特定技能1号へ移行できます。 |
特定技能への移行手続きの流れと期間
技能実習から特定技能への移行は、既に日本に在留している外国人の活動内容を変更する「在留資格変更許可申請」が必要です。
1.雇用契約の締結
受入れ機関(企業)と外国人が雇用契約を結びます。報酬は日本人と同等以上であることが義務付けられています。
2.支援計画の策定
外国人への支援計画(10項目)を策定します。これは登録支援機関に全部または一部を委託することが可能です。
3.事前ガイダンス・健康診断の実施
雇用契約締結前後に、労働条件や生活方法などについての事前ガイダンスを実施し、健康診断を受診します。
4.在留資格変更許可申請
地方出入国在留管理庁に申請を行います。申請は在留期限の3ヶ月前から受付可能です。
移行に必要な期間は、申請から許可まで概ね3ヶ月程度かかります。
特例措置「特定活動」
在留期間満了日までに申請に必要な書類が揃わないなどの合理的理由がある場合、特例措置として、就労を継続しながら移行準備を行うための「特定活動(最長4ヶ月または6ヶ月、就労可)」への在留資格変更が認められることがあります。
育成就労制度の導入と移行要件の変更
育成就労制度の在留資格
2024年6月に成立・公布された改正法に基づき創設される育成就労制度では、在留資格は単一の「育成就労」となります。この制度の目的は、「特定技能1号水準の技能を有する人材の育成」と「人材の確保」であり、特定技能への移行を前提とする在留資格として設計されています。
| 制度 | 在留資格 | 期間 | 区分 | 目的 |
| 技能実習制度(現行) | 技能実習 | 最長5年 | 1号、2号、3号 | 国際貢献(技能移転) |
| 育成就労制度(新制度) | 育成就労 | 原則3年 | 区分なし | 人材育成と人材確保 |
技能実習制度との構造的な違い
現行の技能実習制度は、技能習熟度や在留期間に応じて「技能実習1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)」と区分が分かれていましたが、育成就労制度は原則3年間の育成期間として位置づけられています。
育成就労制度は、この3年間を通じて人材を計画的に育成し、最終的に特定技能1号(最長5年)へスムーズに移行させることを目指しています。
育成期間中の評価要件
「育成就労」の在留資格自体に区分はありませんが、育成期間中には段階的な技能水準と日本語能力の向上が義務付けられ、評価試験が設定されています。
特定技能1号へ移行するためには、育成期間の終了時(原則3年)に、以下の試験に合格することが要件となります。
◇ 技能検定試験3級等 または 特定技能1号評価試験の合格
◇ 日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)の合格
これは、現行の技能実習2号を良好に修了した場合に特定技能1号への移行時に試験が免除される特例とは異なり、新制度からの移行では試験合格が原則必須となります。
なお、試験に不合格となった者でも、再受験のために最長1年間の在留継続が認められます。
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所は外国人のビザ申請をサポートしています。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。
ご参考:技能実習(育成就労)の説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。
・Explanation of 「Training and Employment System」
ご参考:特定技能ビザの説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。


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