特定技能「介護」は、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性と技能を持つ即戦力の外国人材を受け入れる在留資格です。
特定技能「介護」の概要

特定技能制度には1号と2号がありますが、介護分野では「特定技能1号」のみが設けられています。
これは、より専門的な技術を有する人材には、既に国家資格に基づく在留資格「介護」が存在するため、2号を別途設ける必要がないという判断に基づいています。
◇ 在留期間
通算で最大5年(指定された期間ごとの更新が必要)。
◇ 家族帯同
基本的に認められません。
◇ 従事できる業務
身体介護(入浴、食事、排せつの介助等)および付随する支援業務(レクリエーション、機能訓練の補助等)です。
特定技能「介護」の取得要件
外国人が特定技能「介護」を取得するには、「試験ルート」と「免除ルート」の2つがあります。
外国人本人に関する主な要件
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 年齢 | 18歳以上 | 日本上陸時点で満たしていること |
| 健康状態 | 良好であること | 健康診断の受診が必要 |
| 技能水準 | 「介護技能評価試験」に合格 | 免除ルート(技能実習2号修了等)あり |
| 日本語能力1 | 日本語能力試験(N4以上)または国際交流基金日本語基礎テストに合格 | 日常会話レベル。 技能実習2号修了者は免除 |
| 日本語能力2 | 「介護日本語評価試験」に合格 | 介護現場で支障のない日本語力 |
試験免除のルート
◇ 技能実習2号修了者
介護職種の技能実習2号を良好に修了した者は、技能・日本語の両試験が免除されます。
他職種の技能実習修了者は、日本語試験のみ免除され、介護技能・介護日本語の両試験合格が必要です。
◇ 介護福祉士養成施設修了者
試験が免除されます。
◇ EPA候補者
4年間の就労・研修を適切に満了した者は、試験が免除されます。
受入れ機関(事業所)の要件と留意点

受入れ機関には、法令遵守や適切な支援体制が求められます。
受入れ機関に関する主な要件と留意点
| 項目 | 内容 | 根拠・留意点 |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 直接雇用に限る | 派遣による受入れは不可 |
| 報酬額 | 日本人が従事する場合と同等額以上であること | 技能実習修了時は経験を考慮し設定すること |
| 受入れ人数枠 | 事業所単位で「日本人等の常勤介護職員数」が上限 | 日本人等には在留資格「介護」や永住者等を含む |
| 訪問介護 | 2025年4月より一定条件下で解禁 | 初任者研修修了、実務経験1年以上(N2以上なら緩和)が原則 |
二国間取決め(MOC)の役割と主な国の状況

特定技能「介護」において、日本政府が送り出し国政府と締結している二国間取決め(MOC)は、悪質な仲介事業者(ブローカー)を排除し、外国人材が不当な保証金の徴収や人権侵害を受けることなく、円滑に送り出され、受け入れられることを目的としています。
二国間協定に基づく共通の基本フロー
各国ごとに独自の詳細な手続きはありますが、大まかな流れは共通しています。
雇用契約の締結: 受入れ機関と外国人本人が、法令に基づき、日本人と同等以上の報酬額を定めた雇用契約を結びます。
◇ 在留資格認定証明書(COE)の申請
日本の地方出入国在留管理局へ申請を行い、交付を受けます。
◇ 各国政府の承認・登録
各国の労働当局に雇用情報や送出機関の情報を登録し、出国許可(推薦者表や許可証など)を取得します。
◇ 査証(ビザ)申請と入国
COEと各国政府の発行書類を添えて、現地の日本大使館で査証申請を行い、来日します。
国別の具体的なフローと留意点
主な送り出し国であるフィリピン、ベトナム、バングラデシュにおける具体的な手続きフローについて、項目別に説明します。
フィリピン:MWOとDMWの承認プロセス
フィリピンでは、移住労働者省(DMW/旧POEA)への登録が必須となります。
◇ MWO(旧POLO)への登録
受入れ機関は、駐日フィリピン大使館等の移住労働者事務所(MWO)に求人票や雇用契約のひな形を提出し、承認と推薦を受ける必要があります。
◇ DMWへの登録
MWOの承認後、フィリピン本国のDMWに特定技能所属機関として登録されます。
◇ 海外雇用許可証(OEC)の発行
査証発給後、フィリピン出国時に「海外雇用許可証(OEC)」を提示する必要があります。これがないとフィリピンを出国できません。
ベトナム:認定送出機関と推薦者表の利用
ベトナム政府は、基本的に認定された送出機関の利用を求めています。
◇ 労働者提供契約(LSA)
受入れ機関は、ベトナム認定送出機関と契約を締結し、ベトナム海外労働管理局(DOLAB)の承認を受けます。
◇ 推薦者表(推薦リスト)の作成
DOLABが、特定技能として日本での就労が適当と認めた者の「推薦者表」を作成・発行します。
◇ 日本での申請
日本での在留資格申請時に、この推薦者表を提出する必要があります。
バングラデシュ:要求書の認証とECCカード
バングラデシュでは、大使館を通じた認証プロセスが中心となります。
◇ 要求書の提出
日本の受入れ機関は、駐日バングラデシュ大使館に求人詳細(要求書)を提出し、認証済みの要求書の送付を受けます。
◇ ECCの発行
バングラデシュ人材雇用研修局(BMET)にて、「エミグレーション・クリアランス・カード(ECC)」の発行を受ける必要があります。これがバングラデシュ側での出国許可に当たります。
二国間協定における遵守事項
MOCでは、以下の行為を厳格に禁止し、情報の共有と是正措置を講じることとしています。
◇ 不当な費用の徴収禁止
仲介事業者が本人や親族から保証金を徴収したり、契約不履行に対する違約金を定めることを禁じています。
◇ 情報の透明性
外国人本人に対し、費用の算定基準や内訳を十分に理解させ、合意を得る必要があります。
◇ 定期的な協議
日本政府と各国政府は定期・随時の協議を行い、不正行為が認められた送出・受入機関に対して必要な是正措置(認定取消や改善命令等)を講じます。
受入れ機関の役割
介護事業所(受入れ機関)は、これらの二国間フローを遵守するだけでなく、介護分野特有の基準として「介護分野における特定技能協議会」の構成員となり、制度の適正運用に協力する義務があります。
これに協力しない場合は、特定技能外国人の受入れが認められなくなる可能性があります。
介護分野における特定技能協議会

介護分野における特定技能協議会(以下、協議会)とは、特定技能制度の適正な運用を図るために厚生労働省が設置した組織です。受入れ機関(介護施設等)は、特定技能外国人を受け入れるにあたり、この協議会の構成員になることが義務付けられています。
事務局は、厚生労働省から委託を受けた公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が運営しています。
特定技能協議会の目的と主な役割
特定技能協議会は、制度の趣旨を周知し、法令遵守を啓発することで、外国人材が円滑かつ適正に受け入れられる環境を整えることを目的としています。
◇ 制度・優良事例の周知
在留資格「特定技能」の趣旨や、他施設での成功事例を全国的に共有します。
◇ 地域的な偏りの是正
地域別の人手不足状況を把握・分析し、特定地域(大都市圏等)への過度な集中を回避するための調整を行います。
◇ 法令遵守の啓発
受入れ機関に対し、労働関係法令や入管法令を守るよう促します。
◇ 適正な運用の確認
受入れ機関への調査や、外国人材への巡回訪問などを通じて、適切な就労環境が確保されているかを確認します。
加入の義務と留意点
特定技能外国人を受け入れるすべての受入れ機関(法人)は、構成員になる必要があります。
特定技能協議会の加入・運営概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入義務 | 特定技能外国人を受け入れるすべての受入れ機関(法人) |
| 費用 | 入会費、年会費ともに無料 |
| 事務局 | 公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS) |
| 手続き方法 | オンライン(協議会申請システム)のみ |
| 入会証明書の有効期限 | 初回発行時:1年間、更新後:4年間 |
加入のタイミングについて
令和6年(2024年)6月15日以降の運用では、地方出入国在留管理局への在留諸申請を行う前に特定技能協議会へ加入し、「入会証明書」を取得しておく必要があります。以前は受入れ後4か月以内の加入が可能でしたが、ルールが変更されたため注意が必要です。
特定技能協議会手続きの流れ(訪問介護に従事)

特定技能「介護」において、海外から人材を呼び寄せる(在留資格認定証明書:COE取得)ルートで、かつ訪問系サービス(訪問介護等)に従事させる場合の最新手続きフローについて、説明します。
フローと留意点(訪問介護従事・COE取得)
| 段階 | 手続き項目 | 実施・提出のタイミング | 内容・留意事項 |
|---|---|---|---|
| 1 | 協議会への入会申請(事前加入) | 地方入管局へのCOE申請前(必須) | 協議会申請システムで法人・事業所情報を登録し、「協議会入会証明書」を取得します。事業所ごとに指定通知書の写し等が必要です。 |
| 2 | 適合確認申請・キャリアアップ計画提出 | 訪問系サービスに従事させる前 | 外国人一人ひとりに対し、本人と共同作成した「キャリアアップ計画」等を提出し、要件確認を受けます。 |
| 3 | 適合確認書の発行 | 訪問系サービスに従事させる前 | 事務局(JICWELS)より適切な実施体制があると認められた場合、「適合確認書」が発行されます。これがないと訪問介護に従事できません。 |
| 4 | (入管へのCOE申請) | 就労開始前 | 協議会発行の「入会証明書」の写しを添付して入管へ申請します。 |
| 5 | 外国人情報の登録 | 就労開始後4ヶ月以内 | 実際に就労を開始した外国人の詳細情報をシステムに登録します。 |
| 6 | 情報の更新・定期報告 | 変更時・定期的 | キャリアアップ計画は1年ごとに振り返り・更新を行い、協議会へ提出します。 |
| 7 | 巡回訪問への対応 | 就労開始後(随時) | 事務局による巡回訪問を受け入れ、雇用状況や研修実施体制の確認に協力します。拒否した場合は基準不適合となります。 |
入会証明書と適合確認書の事前取得
◇ 入会証明書の義務化
COE申請時に「協議会入会証明書」の写しを提出できなければ、在留資格の許可が下りません。
◇ 適合確認のタイミング
訪問介護に従事させる場合は、業務開始前に必ず「適合確認書」の発行を受けていなければなりません。
外国人本人に関する厳格な要件
訪問介護に従事させる外国人は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
◇ 研修修了
介護職員初任者研修課程等の修了が必須です。
◇ 実務経験
原則として、介護事業所等での1年以上の実務経験が求められます。
◇ 例外措置
日本語能力試験N2相当以上を有する場合に限り、1年未満の実務経験でも従事可能ですが、利用者ごとの同行訪問期間(週1回なら半年間等)の延長が課されます。
キャリアアップ計画の策定と共有
外国人本人と丁寧なコミュニケーションをとり、将来の目標や資格取得計画(介護福祉士取得等)を盛り込んだ「キャリアアップ計画」を共同作成し、本人の署名を得る必要があります。
この計画は作成して終わりではなく、毎年1回振り返りを行い、協議会へ更新報告を行う義務があります。
事業所が遵守すべき環境整備(5つの遵守事項)
適合確認を受けるためには、以下の体制整備が必須となります。
◇ 研修実施
訪問系サービスの基本事項、日本の生活様式、緊急時対応等に関する研修。
◇ 同行訪問(OJT)
一人で適切に業務ができると認められるまでの一定期間、責任者等が同行すること。
◇ ハラスメント対策
相談窓口の設置、対応マニュアルの作成、利用者・家族への周知。
◇ ICT活用
不測の事態に備え、スマートフォンやアプリを活用した緊急連絡・情報共有体制の整備。
利用者および家族への説明
外国人が訪問する可能性があることや、その実務経験、ICT機器の使用等について、事前に対象利用者や家族へ書面で説明し、署名を得ておく必要があります。
協議会への協力義務と退会措置
協議会の構成員(受入れ施設)は、厚生労働省や事務局が実施する調査、意見聴取、指導、および巡回訪問に対して必要な協力を行う義務があります。
正当な理由なく巡回訪問を拒否したり、法令違反が改善されなかったりした場合は、協議会から退会措置をとられることがあり、その結果、特定技能外国人の受入れが不可能となります。
※手続きの詳細は、事務局である国際厚生事業団(JICWELS)の最新マニュアルを確認し、オンライン申請システムに従って進めてください。
構成員の義務と協力事項
協議会の構成員となった受入れ機関には、以下の協力義務が生じます。
◇ 情報の更新
法人、事業所、または登録した外国人情報に変更が生じた場合は、速やかにシステム上で更新しなければなりません。
◇ 調査・指導への協力
厚生労働省や協議会が行う調査、情報の収集、意見の聴取、および巡回訪問に対して必要な協力を行う必要があります。
◇ 是正措置の実施
協議会において不正防止策などの協議が調った事項については、それに準じた措置を講じなければなりません。
訪問系サービス(訪問介護)への従事(2025年4月〜)

2025年4月より、一定の要件を満たすことで訪問介護への従事が解禁されました。
この際、協議会(JICWELS)に対し、外国人ごとに「適合確認書」の発行を受ける特別な手続きが必要となります。
◇ 要件確認
実務経験1年以上(原則)や初任者研修修了などの要件を確認します。
◇ 計画提出
外国人本人と共同作成した「キャリアアップ計画」を提出し、定期的な報告と更新を行う必要があります。
協議会は、単なる登録組織ではなく、外国人材の権利を守り、日本の介護サービスの質を維持するための重要な監督・支援機関として機能しています。
まとめ
特定技能「介護」での受入れには、外国人本人の試験合格や実務経験に加え、受入れ機関側も直接雇用や人数枠の遵守、協議会への事前入会といった厳格な基準を満たす必要があります。
また、フィリピンやベトナム等の主要な送り出し国では、二国間取決め(MOC)訪問介護への従事も可能となり、活用の場がさらに広がっています。
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ご参考:特定技能ビザの説明動画
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