「技術・人文知識・国際業務」ビザで飲食店への就労は可能?

外国人材の採用を検討する飲食店の人事担当者の方や、日本で飲食店での就職を希望する外国人の方にとって、「技術・人文知識・国際業務」ビザ(通称:技人国ビザ)で飲食店に就労できるかどうかは重要な関心事でしょう。本記事では、技人国ビザの概要から、飲食店での就労の可否、具体的な業務例、そして他の関連するビザについて解説します。

「技術・人文知識・国際業務」ビザとは?

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、海外の「ワーキングビザ」に相当する在留資格です。このビザは、自然科学や人文科学などの専門知識、または外国の文化に関する知識を必要とする業務に従事するために付与されます。人手不足を解消することを目的とした「特定技能」ビザとは性質が異なります。

このビザで許可される業務は、外国人が大学や専門学校で学んだ知識、仕事で培ってきた経験、母国の文化や言語に関する知識と関連性があるものに限られます。単純作業や、本人の学歴・職歴と関連性のない業務は原則として認められません。

飲食店での「技術・人文知識・国際業務」ビザでの就労

結論から申し上げますと、飲食店のホールスタッフや調理スタッフといった、いわゆる「単純労働」とみなされる業務で「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得することは原則として困難です。しかし、飲食店の業務内容によっては、「技術・人文知識・国際業務」ビザでの就労が認められる例外的なケースも存在します。

可能性のある業務例

本社スタッフ・管理業務

◇ 多店舗展開する飲食チェーンの本社で、経営企画、人事、経理、海外事業などを担当する場合
例えば、海外店舗の進出計画立案や、外国人従業員の労務管理など、大学で学んだ経営学や国際関係学の知識を活かす業務が考えられます。

◇ 一定規模以上の店舗数を有する飲食店で、エリアマネージャーやスーパーバイザーとして、複数店舗の運営管理、スタッフ指導、マーケティング戦略などを担当する場合
ただし、この場合、新卒でいきなり管理職に就くのではなく、過去のアルバイト経験や高い日本語能力、学校での優秀な成績などを通して、その能力が十分に証明できる必要があります。

◇ 具体的な例
・日本の大学で経営学を専攻した外国人が、海外に複数の店舗を持つ日本食レストランチェーンの本社で、海外店舗のマーケティング戦略立案や市場調査を行う。

・日本の専門学校でフードビジネスを学び、系列のレストランでアルバイト経験のある外国人が、複数店舗を統括するエリアマネージャーとして、店舗の運営指導や品質管理を行う(過去の経験や日本語能力が評価される必要あり)。

国際的な顧客対応・翻訳・通訳業務

◇ 外国人観光客が非常に多いレストランで、多言語メニューの作成、外国人客への通訳、外国語での接客、海外からの予約対応などを担当する場合
ただし、接客業務がメインではなく、あくまで通訳・翻訳業務に付随する場合に限られます。

◇ 具体的な例
・日本の大学で言語学を専攻し、高い日本語能力と英語力を持つ外国人が、外国人観光客が多い高級レストランで、メニュー翻訳、顧客への料理説明、予約対応などを行う。

実務研修

採用当初に一定期間の実務研修が設けられている場合、その期間に行う活動が「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務(例えば、接客や販売)であっても、日本人の大卒社員等にも同様に行われる研修の一環であり、在留期間全体として専門的な業務に従事することが前提であれば、相当性が判断された上で認められることがあります。ただし、研修期間が在留期間の大半を占めるような場合は認められません。また、採用から1年を超える研修の場合は、詳細な研修計画の提出が求められ、合理性が審査されます。

注意点

◇ 「マネージャー」などの肩書があっても、実際にはホールや調理の業務が中心である場合は、「技術・人文知識・国際業務」ビザの対象とはなりません。入国管理局は、実際の業務内容を厳しく審査します。

◇ 小規模な店舗で、管理業務だけを行う人員を雇用する必要性がないと判断される場合は、許可が下りにくい傾向があります。入国管理局は、「単純労働も行うのではないか」という疑念を持ちやすいです。

◇ 管理業務を行う場合は、独立したデスク(作業スペース)が必須となる場合があります。

他の就労可能なビザ

飲食店で外国人材を雇用する場合、「技術・人文知識・国際業務」ビザ以外にも、業務内容や外国人のスキルに応じて適切なビザがあります。

◇ 特定技能(外食)
人手不足が深刻な外食業において、調理、接客、衛生管理、店舗管理などの幅広い業務に従事できるビザです。試験合格と日本語能力が求められます。

◇ 技能(調理師)
高度な調理技術を持つ外国料理人(自国で考案された特殊な料理を提供する)が、その技能を活かして働くためのビザです。原則として10年以上の実務経験が必要です。

◇ 特定活動(特定調理等活動、46号)
日本の調理専門学校卒業生が日本のレストランで実践的な経験を積むためのビザや、日本の大学・大学院卒業生が外食業を含む幅広い分野で働くためのビザです。一定の日本語能力が求められます。

◇ 身分系の在留資格(永住者、日本人の配偶者等)
就労制限がなく、どのような業務にも従事できます。

◇ 資格外活動許可を得た留学・家族滞在ビザ
週28時間以内のアルバイトが許可されます。

飲食店におけるビザの選択

ビザの種類主な対象業務単純労働学歴・職歴日本語能力備考
技術・人文知識・国際業務・本社スタッフ(企画、人事、経理など)

・エリアマネージャー(一定規模以上)

・国際顧客対応/翻訳/通訳(付随的)

・限定的な実務研修
原則不可大学卒以上、または関連分野での実務経験必要・実際の業務内容が重要。肩書だけでは不可。

・小規模店舗は難しい場合あり。
特定技能(外食)・調理、接客、衛生管理、店舗管理など可能不問N4以上・試験合格が必要。

・企業側の支援義務あり。

・最長5年間の在留期間。
技能(調理師)・外国料理の調理(特殊な料理)調理のみ原則として10年以上の実務経験不問・提供する料理に条件あり。

・ウェイター業務などは不可。
特定活動
(特定調理等活動、46号)
・調理の実践経験(専門学校を卒業)

・販売、飲食、ホテルなど(大学・大学院卒)
一部可能専門学校/大学/大学院卒必要・活動内容による制限あり。

・「単純作業」のみは不可。
身分系の在留資格(永住者など)制限なし可能不要不要
留学・家族滞在(資格外活動許可)・アルバイト(ホール、キッチンなど)可能在学中・在留資格を有する者不要・週28時間以内の制限あり。

まとめ

飲食店で外国人材の採用を検討する際は、採用したい業務内容と外国人が持つスキル、学歴、経験を照らし合わせ、適切な在留資格を選択することが重要です。「技術・人文知識・国際業務」ビザは、専門知識を活かした業務には適していますが、単純労働が中心となる業務には原則として該当しません。

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