旅館業許可|要件・申請の流れ・必要書類

旅館業許可|要件・申請の流れ・必要書類

旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業)を始めるための申請要件手続きの流れ必要書類について解説します。

旅館業許可申請の要件

旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業等)の営業許可を取得するためには、旅館業法および関連法令・自治体条例で定められた「欠格要件」「構造設備要件」「立地要件」「管理・衛生要件」の4つの要件を満たす必要があります。

欠格要件(人的要件)

申請者(法人の場合は業務を行う役員全員)が以下のいずれかに該当する場合は、営業許可を受けられません。

主な該当内容
健康・能力精神の機能の障害により、旅館業を適正に行うための認知・判断・意思疎通を適切に行えない者
法的処分破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
刑罰歴拘禁刑(禁錮)以上の刑、または旅館業法等の違反で罰金刑を受け、執行終了等から3年を経過しない者
許可取消歴旅館業の営業許可を取り消され、取消しの日から3年を経過しない者
反社会的勢力暴力団員または暴力団員でなくなってから5年を経過しない者、あるいは暴力団員等が事業活動を支配する者

構造設備要件

営業種別に応じて、客室面積や設備などの基準が定められています。

旅館・ホテル営業簡易宿所営業
営業の定義・施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業・多数人で共用する構造・設備を主とする施設
客室床面積・1客室あたり7㎡以上
 (寝台を置く場合は9㎡以上)
・総客室面積33㎡以上
 (10人未満は3.3㎡×定員数以上)
玄関帳場
(フロント)
原則設置(面接・本人確認に適した構造)

※ICT端末等による本人確認・カメラ・緊急駆け付け体制(約10分以内)等の要件を満たせば設置不要(無人対応可)
衛生・設備・適当な換気、採光、照明、防湿、排水設備、入浴設備、洗面設備、適当な数の便所を設置・左記に加え、2段ベッド(階層式寝台)は上下間隔をおおむね1m以上確保

立地要件

◇ 用途地域による制限(都市計画法・建築基準法)
第一種住居地域、第二種住居地域、商業地域、準工業地域などで建築・用途変更が可能です。工業専用地域や住居専用地域などでは営業できません。

◇ 学校・児童福祉施設等からの距離制限(意見照会)
申請施設の敷地からおおむね100m(自治体により110m等)以内に学校、幼稚園、保育所、図書館、児童福祉施設等がある場合、保健所から関係機関へ意見照会が行われます。清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認められる場合は許可が下りないことがあります。

管理・衛生措置要件

◇ 面接・本人確認・鍵の交付
玄関帳場等で対面、またはICT機器(ビデオ通話・パスポート確認・カメラ録画等)を用いて本人確認や適正な鍵の受渡しを行います。

◇ 緊急駆け付け体制
フロント無人型(不在型)の場合、緊急時に原則**通常おおむね10分以内(道のり概ね800m以内等)**で現場に駆け付けられる体制と通信機器を備える必要があります。

◇ 宿泊者名簿の整備
宿泊者の氏名・住所・連絡先(日本国内に住所がない外国人は国籍・パスポート番号および写し)等を記載し、3年間保存します。

申請の流れ

旅館業の営業許可を取得するまでの流れは、法令や衛生基準への適合確認、施設検査を経て許可に至るステップで構成されます。

項目主な実施内容
Step 1事前相談・立地確認用途地域(都市計画法)の確認、保健所・消防署・建築指導課等への事前相談
Step 2事前手続(事前周知等)自治体条例・要綱に基づく標識設置や近隣住民への説明・周知(※自治体により規定)
Step 3工事・他法令手続建築確認・用途変更手続き、消防設備の設置、消防法令適合通知書等の取得
Step 4許可申請書の提出申請書および添付書類一式を所管保健所へ提出、申請手数料の納付
Step 5関係機関への意見照会消防署への通知、周囲(約100〜110m以内)の学校・児童福祉施設等への意見照会
Step 6実地調査(施設検査)保健所監視員による現場検査。客室面積、換気・照明、玄関帳場等の構造設備確認
Step 7許可書の交付・営業開始審査・検査の基準適合確認後、営業許可書が交付され営業可能となる

◇ 事前相談・関係機関協議
施設計画の初期段階で、計画地が都市計画法上の用途地域において旅館業が可能な場所か確認します。
併せて、保健所(構造設備基準)、消防署(消防設備)、建築主事・土木事務所(建築基準法・用途変更)等の関係窓口へ図面を持参して事前相談を行います。

◇ 他法令の適合と通知書の取得
建物の新築や用途変更(200㎡超の用途変更時の確認済証、200㎡以下の適合証明等)に応じた建築基準法の手続きを進めます。
また、所轄消防署から「消防法令適合通知書」の交付を受けます。

◇ 申請書の提出と審査
工事完成前(既存建物の場合は計画確定後)、必要書類一式を揃えて保健所窓口へ申請します。
申請時には自治体ごとの手数料の納付が必要です。

◇ 施設検査と許可
施設完成後、保健所職員が現地検査を実施し、図面通りかつ構造設備基準に適合しているか確認します。
不備がなければ営業許可書が交付されます。

自治体による手続きの違い(事前協議・事前周知等)

多くの自治体では独自の手続要綱や条例により、申請前の事前手続(事前協議、標識設置、近隣説明)を義務付けまたは指導しています。

◇ 名古屋市
営業許可申請を行う前に、周辺住民へ営業計画を公表する事前手続き(事前協議・相談)が必要とされています。

◇ 京都市
建築確認申請や許可申請に先立ち事前協議を行うほか、構想段階での標識設置(建築確認の90日前/不要な計画は許可申請の50日前、または承認申請の20日前)や近隣住民・自治会への説明、協定締結の努力義務などが細かく規定されています。

◇ 東京都区部(港区・墨田区・江戸川区・北区など)
許可申請を行う15日〜20日前までに施設へ計画標識を設置し、近隣住民(敷地境界から10m〜20m範囲など)へ説明会や戸別訪問・書面ポスティング等による事前周知を行い、その結果報告書を保健所に提出することが求められます。

申請に必要な書類

旅館業の営業許可申請で提出する書類は、「事業者に関する書類」「構造設備・図面関係」「権利関係」「他法令適合関係」に大別されます。

必要書類名内容・
基本申請旅館業営業許可申請書申請者の住所・氏名・生年月日(法人は名称・代表者)
施設名称・所在地
営業種別等
を記載
構造設備の概要書敷地・建物面積
客室数
定員
便所・浴室・洗面設備等
の仕様を明記
欠格事由の誓約書・申告書旅館業法第3条第2項各号の欠格条件に該当しない旨の誓約(法人は役員全員分)
図面関係付近見取図(周辺地図)施設を中心に半径150m〜300m以内の住宅、道路、学校等の位置および距離を明示
配置図・立面図敷地と建物の位置関係、寸法、建物の正面図・側面図等
各階平面図客室名、定員、内法寸法、床面積、窓、便所、洗面、浴室等の配置を明記
設備系統図・配管図照明配線図、機械換気系統図、給排水系統図・経路図、ガス配管図(ガス設置時)
求積図および計算式客室の内法面積算定(睡眠・休憩部分の有効面積算定含む)等
権利関係登記事項証明書(建物・土地)建物の所有権を確認する書類(発行後3〜6ヶ月以内の原本)
賃貸借契約書・使用承諾書申請者が所有者でない場合、旅館業営業に供することを所有者が承諾した証明書
マンション管理規約・承諾書区分所有建物の物で専有部分を使用する場合、旅館業を禁止しない規約の写し等
法人・個人証明定款または寄附行為の写し申請者が法人の場合に添付(現行・原本証明付き)
法人の登記事項証明書履歴事項全部証明書等(発行後3〜6ヶ月以内)
住民票の写し個人の場合(自治体により提出を求められる場合あり)
他法令適合消防法令適合通知書管轄消防署長が交付した適合通知書(原本)
建築基準法適合書類新築等の検査済証の写し、または用途変更の確認済証/建築士の適合証明書
自治体特有事前周知・標識報告書計画標識設置届、写真、近隣説明実施報告書・説明資料の写し等
無人営業(玄関帳場代替)資料ICT端末・カメラ仕様書、駆け付け体制疎明書、緊急連絡先、管理委託契約書等(該当時)

基本申請書類・誓約書

◇ 営業許可申請書・構造設備概要書
施設の種別(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業等)に応じた構造要件(客室面積、定員、設備数等)を記入します。

◇ 欠格事由の申告書・誓約書
破産手続開始決定を受けて復権を得ない者や拘禁刑以上の処罰、暴力団員等の欠格事由に該当しない旨を誓約します。

施設・構造設備および図面関係書類

◇ 各種図面
壁芯計算による敷地・延床面積だけでなく、客室床面積は内法寸法(壁の内側寸法)で計算した求積図が必要となります。

◇ 設備配管・系統図
換気・照明設備の位置、給水・排水の経路、客室内のガス配管等を明示した図面を添えます。

土地・建物の権利関係書類

◇ 賃貸物件・区分所有物件の注意点
自物でない物件で営業する場合は、不動産登記事項証明書に加え、賃貸借契約書および所有者による「旅館業としての使用承諾書」が必須です。

分譲マンション等の区分所有建物の場合は、管理規約で旅館業が禁止されていないことの確認書類や管理組合の承諾書が求められます。

他法令適合書類

旅館業の営業許可を取得するには、保健所の衛生審査だけでなく消防法および建築基準法への適合確認が必須となります。

消防法関係

◇ 消防法令適合通知書
事前相談・消防設備設置のうえ、管轄消防署の現場検査を経て交付を受け、申請書に添付します。

建築基準法関係

建物の計画形態や用途変更の床面積に応じて、提出・提示する書類が異なります。

建物の形態・規模必要な適合確認書類手続きのポイント
新築・増改築検査済証(写し)工事完了検査後に交付される書類
既存建物の用途変更
(200㎡超)
確認済証(写し)建築確認申請が必要な転用工事で交付される書類
既存建物の用途変更
(200㎡以下)
建築士による適合証明書建築確認申請は不要ですが、法適合義務があるため一級建築士等の証明が必要

自治体指定書類

自治体ごとの条例や要綱により、提出が求められる独自指定書類は異なります。

◇ 名古屋市
申請前に行う周辺住民への営業計画公表(事前手続き)に係る報告書や事前協議関連の書面。

◇ 京都市
標識設置写真・報告書、近隣説明状況報告書(住民意見と対応状況)、廃棄物処理方法報告書、避難通路幅員確認図書、屋号看板の設計図等。

◇ 東京都港区・墨田区等
計画標識設置届・写真、近隣事前周知・説明会報告書、無人営業時のICT端末仕様書や緊急駆け付け体制の疎明書等。

地域ごとの住環境維持や近隣配慮、管理体制を証明する書類が中心となります。

無人営業関連書類

玄関帳場(フロント)を設けない無人営業(不在型施設)では、主に以下の書類が必要となります。

◇ 代替設備の仕様書・図面
本人確認用ICT端末、防犯カメラ、スマートロック等の機能仕様書や設置場所を示す図面。

◇ 本人確認・チェックイン説明書
面接に代わる本人確認、鍵の受け渡し、出入り確認の具体的な手順。

◇ 緊急駆け付け体制の資料
駆け付け拠点(原則10分以内)との位置関係・ルート図や通話機器の概要。

◇ 委託契約書・疎明書
管理委託契約書の写しや、緊急対応等を行う従事者の業務疎明書。

◇ 標識・表札に関する資料
無人営業の施設で、緊急時に近隣住民や宿泊客がすぐ連絡を取れるよう、案内板を適切な場所に設置することを証明する書類です。
施設名や緊急連絡先を明記した「案内看板のデザイン」と、建物の外から見やすい「どこに掲示するかを示した図面」です。

3問クイズにチャレンジ!

旅館・ホテル営業の許可について、3問のクイズに挑戦してみましょう!

第1問|旅館・ホテル営業と用途地域

旅館・ホテルを建築できる用途地域について、次のうち間違っているものはどれでしょうか?

正解:A. 第一種低層住居専用地域

旅館・ホテルを建築できる用途地域は、 第一種住居地域(3,000㎡以下)、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域 です。

一方、低層住居専用地域、中高層住居専用地域、田園住居地域、工業地域、工業専用地域では、原則として旅館・ホテルを建築できません。 したがって、今回の選択肢では「第一種低層住居専用地域」が間違いです。

なお、実際の物件では、用途地域だけでなく、地区計画や条例などによる制限も確認する必要があります。

第2問|2025年4月からのフロント要件

旅館・ホテル営業で玄関帳場(フロント)を設置せず、従業員との面接なしで自動チェックインを行う場合、 2025年4月から新たに認められた方法として正しいものはどれでしょうか?

正解:C

2025年4月1日からフロント要件が見直され、一定の要件を満たすことで、 従業員との面接によらず本人確認を行う方法が認められました。

この方法では、本人確認情報と二次元コードや暗証番号等を事前に共有し、 自動チェックイン機器等で情報を照合するとともに、 本人確認の状況を宿泊者の顔が判別できる角度から録画すること などが求められます。

また、本人確認を受けた宿泊者以外が宿泊者専用区域へ無断で出入りできない仕組みや、 緊急時の対応体制なども必要です。

第3問|賃貸マンションで旅館・ホテル営業

賃貸マンションの1室で旅館・ホテル営業を行う場合、事前の確認として適切なものはどれでしょうか?

正解:C

賃貸マンションで旅館・ホテル営業を行う場合、 物件を借りることができることと、旅館業として使用できることは別に確認する必要があります。

賃貸借契約で旅館業としての使用が認められているか、所有者から必要な承諾を得られるかに加えて、 マンションの管理規約などに旅館業としての使用に反する規定がないか を確認することが重要です。

特に共同住宅では、物件を契約する前に、 賃貸借契約・所有者の承諾・管理規約等を確認しておくことが重要です。

クイズへの挑戦、ありがとうございました!

旅館・ホテル営業の許可では、用途地域、建物の状況、営業方法、管理規約など、 物件ごとに確認すべきポイントが異なります。

あなたの想いを未来へ繋ぐお手伝いをします。

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