民泊のサービスを始めるには、あらかじめ届出をする必要があります。各自治体の独自条例によって、民泊の届出や運営について特別なルールが設けられているケースがあり、必要な書類は自治体によって違います。以下は例として名古屋市の手続きの流れです。
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STEP 1:住宅宿泊事業の要件・業務の確認
住宅宿泊事業の要件

住宅の要件(法第2条第1項、厚・国省令第1条)
住宅宿泊事業を営む住宅は、「台所・浴室・便所・洗面設備」が設けられている家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものであることが必要です。
◇ 設備要件
当該家屋内に「台所・浴室・便所・洗面設備」が設けられていること
◇ 居住要件
次のいずれかに該当するものであって、事業(人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く。)の用に供されていないもの
一 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
二 入居者の募集が行われている家屋
三 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
宿泊日数等の要件
◇ 住宅宿泊事業の定義(法第2条第3項、厚・国省令第3条)
住宅宿泊事業とは、旅館業法に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人 を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として算定した日数が一年間(4月 1日正午から翌年4月1日正午まで)で180日を超えないものをいいます。
◇ 名古屋市の条例による制限(法第18条、条例)
名古屋市では、「名古屋市住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例」を定め、住居専用地域における平日の住宅宿泊事業の実施を制限しています。
| 制限内容 | |
| 制限 区域 | 住居専用地域 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 ※住宅宿泊事業を実施しようとする住宅の敷地の過半が住居専用地域に含まれる 場合には、住居専用地域とみなします。 |
| 制限 期間 | 月曜日の正午から金曜日の正午まで ※国民の祝日に関する法律に規定する休日の前日の正午からその休日の翌日の正 午までの期間を除きます。 |
欠格事由(法第4条)
欠格事由としては、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、禁錮以上の刑に処せら れ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過しない者等が規定されています。
その他要件
◇ 届出者が賃借人又は転借人の場合において、賃貸人又は転貸人が住宅宿泊事業を目的とした賃借物又は転借物の転貸を承諾していないときは、住宅宿泊事業は行えません。
◇ マンションで住宅宿泊事業を営もうとする場合において、マンション管理規約にお いて住宅宿泊事業が禁止されているとき、もしくは管理組合の総会又は理事会において住宅宿泊事業を禁止する方針の決議がなされているときは、住宅宿泊事業は行えません。
住宅宿泊事業の業務

宿泊者の衛生の確保(法第5条、厚省令)
住宅宿泊事業者は届出住宅について、宿泊者の衛生を確保するために必要な措置を講じなければなりません。
◇ 居室の床面積は、宿泊者一人あたり3.3㎡以上を確保すること。
◇ 定期的な清掃及び換気を行うこと。
宿泊者の安全の確保(法第6条、国省令第1条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅について、宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置を講じなければなりません。
◇ 「非常用照明器具の設置」及び「火災その他の災害が発生した場合における宿泊者 の安全の確保を図るために必要な措置」
◇ 避難経路の表示
外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保 (法第7条、国省令第2条)
住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るため、外国語を用いて次の措置を講じなければなりません。
◇ 届出住宅の設備の使用方法に関する案内をすること
◇ 移動のための交通手段に関する情報を提供すること
◇ 火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内をすること
◇ 前三号に掲げるもののほか、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置
宿泊者名簿の備付け等(法第8条、厚・国省令第7条)
住宅宿泊事業者は、宿泊者名簿を備え、市長の要求があったときは提出しなければなりません。
◇ 正確な記載を確保するための措置
宿泊者名簿は、宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成しなければなりません。
◇ 所定の事項の記載
宿泊者名簿には、次の事項を記載しなければなりません。
・宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日
・宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号
◇ 所定の場所への備付け
宿泊者名簿は、次のいずれかの場所に備えなければなりません。
・届出住宅
・住宅宿泊事業者の営業所又は事務所
◇ 保存期間
宿泊者名簿は、その作成の日から3年間保存しなければなりません。
周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明 (法第9条、厚・国省令第8条)
住宅宿泊事業者は、宿泊者に対し、書面の備付けその他の適切な方法により(外国人に対しては外国語を用いて)、次の事項を説明しなければなりません。
◇ 騒音の防止のために配慮すべき事項
◇ ごみの処理※に関し配慮すべき事項
◇ 火災の防止のために配慮すべき事項
◇ 前三号に掲げるもののほか、届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項
苦情等への対応(法第10条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、 適切かつ迅速にこれに対応しなければなりません(苦情があってから当該届出住宅に赴くまでの時間は原則として30分以内)。
住宅宿泊管理業務の委託(法第11条、厚・国省令第9条)
住宅宿泊事業者は、次のいずれかに該当するときは、当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務の全部を契約により一の住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。ただし、住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者である場合において、自ら住宅宿泊管理業務を行うときは、委託する必要はありません。
◇ 届出住宅の居室の数が5を超えるとき
◇ 届出住宅に人を宿泊させる間、不在(一時的なもの(日常生活を営む上で通常 行われる行為に要する時間の範囲内の不在)を除く。)となるとき。
宿泊サービス提供契約の締結の代理等の委託(法第12条、厚・国省令第10条)
住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約(宿泊者に対する届出住宅における宿泊 サービスの提供に係る契約をいう。)の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、 住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければなりません。 なお、委託をしようとするときは、当該委託をしようとする住宅宿泊仲介業者又は 旅行業者に対し、次に掲げる事項を通知しなければなりません。
◇ 商号、名称又は氏名
◇ 当該委託に係る届出住宅の所在地
◇ 当該委託に係る届出住宅の届出番号
標識の掲示(法第13条、厚・国省令第11条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、所定の様式の標識を掲げなければなりません。
定期報告(法第14条、厚・国省令第12条)
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月 の15日までに、それぞれの月の前2月における、次に掲げる事項を市長に報告しなければなりません。
◇ 届出住宅に人を宿泊させた日数
◇ 宿泊者数
◇ 延べ宿泊者数
◇ 国籍別の宿泊者数の内訳
その他業務
マンションで住宅宿泊事業を営んでいる場合は、1年に 1回以上管理組合に届出住宅 において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認しなければなりません。
STEP 2:他法令の確認
◇ 住宅宿泊事業を実施する場合、法令上「事業者」として取扱われますので、届出前には適用されなかった様々な規制が適用される可能性があります。
◇ 住宅宿泊事業法以外の他法令の確認は事業者自身の責任において行う必要があるので、注意が必要です。例えば、消防法令、公害関係法令、食品衛生法、温泉法等です。
STEP 3:図面の準備・安全措置の確認

届出しようとしている住宅の図面を準備し、次の事項を明示しなければなりません。
◇ 台所、浴室、便所及び洗面設備の位置
◇ 住宅の間取り及び出入口
◇ 各階の別
◇ 居室、宿泊室(宿泊者が就寝するために使用する部屋)及び宿泊者の使用に供 する部分(宿泊室を除く)のそれぞれの床面積
◇ その他
「非常用照明器具の位置」及び「火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置の内容」を図面に明示しなければなりません。
STEP 4:管轄保健センターへの事前相談
◇ STEP3で作成・確認した図面を持参し、管轄保健センターへ事前相談に行きます。
◇ 事前相談を受けていない場合、建物のうちどの範囲が届出住宅となるかが不明確などの理由により、STEP6の管轄消防署での相談や消防法令適合通知書の交付申請が受け付けられない場合があるので注意が必要です。
STEP 5:周辺地域の住民への事前周知
◇ 周辺地域の生活環境との調和を図り、円滑に事業を実施するために、事前周知を行わなければなりません。
◇ 次の事項を記載した書面を作成し、当該書面を個別配付するか、説明会を開催して配付しなければなりません。
・商号、名称又は氏名
・住宅の所在地
・緊急時連絡先
・周辺地域の住民からの問い合わせの方法等
STEP 6:管轄保健消防署への相談、消防法令適合通知書の交付
◇ 管轄保健センターで事前相談を済ませた図面その他の書類をもって、管轄の消防署へ相談し、消防法令適合通知書の交付申請を行ってください。
◇ 交付申請を受けて、消防署が実地検査を行います。
◇ 消防署が消防法令に適合していることを確認したら、消防法令適合通知書が交付されます。消防法令適合通知書又はその写しを住宅宿泊事業の届出に添付しなければなりません。
STEP 7:届出書の提出
届出は、原則として「民泊制度運営システム」を利用します。「民泊制度運営システム」は、国が運営する「民泊制度ポータルサイト」の中にあります。
STEP 8:書類の作成・取寄せ
届出書の作成・提出方法や添付書類については、観光庁の「民泊制度ポータルサイト」を確認します。
届出者によって必要書類が異なりますが、主な添付書類を以下に示します。
| 書類種別 | 個人 | 法人 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 住宅宿泊事業届出書 | 〇 | 〇 | システム上で直接入力。 |
| 住宅の登記事項証明書 | 〇 | 〇 | 発行から3ヶ月以内の原本が必要。 |
| 住宅の図面 | 〇 | 〇 | 間取り、床面積、設備位置、安全措置を明記。 |
| 消防法令適合通知書 | 〇 | 〇 | 消防署の立入検査を経て発行される最重要書類。 |
| 欠格事由に該当しない誓約書 | 〇 | 〇 | 破産者や暴力団員等でないことを誓うもの。 |
| 定款(または寄附行為) | - | 〇 | 現在効力を有するものの写し。 |
| 法人の登記事項証明書 | - | 〇 | 商号や役員、目的の確認用。 |
| 市町村長の証明書 | 本人 | 役員全員 | 破産復権に関する証明。本籍地で取得。 |
| 登記されていないことの証明書 | 本人 | 役員全員 | 成年後見制度の未登録証明。法務局で取得。 |
※このほか、賃貸物件の場合は「転貸の承諾書」、マンションの場合は「規約の写し」または「管理組合の誓約書」が必要です。
届出における留意点
◇ 公的書類の有効期限と原本性
官公署が発行する証明書(登記事項証明書、身分証明書等)は、届出日前3ヶ月以内に発行されたものでなければなりません。また、原則として原本の提出が求められ、コピーは認められません(システム利用時はスキャンデータを添付)。
◇ 住宅図面の精度
単なる間取り図では不十分です。台所・浴室・便所・洗面設備の「4点セット」の位置、居室・宿泊室の面積(内寸面積)、非常用照明器具の設置場所などを正確に記載する必要があります。
◇ システムのログイン権限
代理人(行政書士等)がシステムを操作する場合でも、原則として届出者本人に発行されたIDを使用する必要があります。また、電子申請にはマイナンバーカード(個人)や商業登記用電子認証(法人)等の電子署名が必要になる場合があります。
STEP 9;届出の受理
管轄保健センターが届出を受理されると、民泊制度運営システムにより届出番号が通知されます。
STEP 10:標識の作成・掲示
届出番号等が記載された標識の作成・掲示を行います。
参考:民泊のしおり(第12版・令和6年4月) 名古屋市
これから民泊新法で民泊事業を始めたいならば、申請を行って、届出番号を取得しなければいけません。民泊の届出が完了するまでの期間はそれぞれの状況によって異なるので、あらかじめ情報を集めて、必要な書類を用意しておきましょう。
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所では、名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県を中心に、民泊新法・旅館業法に基づく民泊申請をサポートしています。お客様ごとに異なるご事情やご希望を丁寧にお聞きし、最適な手続きをご提案します。豊富な申請実績を活かし、スムーズな許可取得をお手伝いします。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。
ご参考:民泊申請の説明動画
民泊申請の概要、注意点について、動画でわかりやすくご紹介します。
【民泊情報】
・「民泊」を始めるにあたり、保健所への事前相談は何を行うのか?
【旅館業】





