民泊を始めるにあたって、まず最初に確認すべき重要なポイント、それは保健所への事前相談です。なぜなら、民泊にはいくつかの営業形態があり、それぞれ必要な手続きや基準が異なるからです。
営業形態

民泊を運営する方法は主に3種類あり、それぞれ異なる法的根拠、要件、義務があります。その主な違いを以下の表に示します。
| 住宅宿泊事業(民泊新法) | 旅館業(旅館・ホテル営業) | 旅館業(簡易宿所) | |
| 根拠法 | 住宅宿泊事業法 | 旅館業法 | 旅館業法 |
| 許認可 | 届出制 | 許可制 | 許可制 |
| 営業日数 | 年間180日以内(一部自治体でさらに制限される場合あり) | 制限なし | 制限なし |
| 用途地域 | ほぼ制限なし(ただし、一部自治体の条例で住居専用地域等に制限あり) | 制限あり(住居専用地域、工業地域、工業専用地域は不可) | 制限あり(住居専用地域、工業地域、工業専用地域は不可) |
| 建築基準法上の用途 | 住宅、長屋、共同住宅、寄宿舎 | 旅館又はホテル | 旅館又はホテル |
| 客室の最低数 | 規定なし | 規定なし | 規定なし |
| 延床面積要件 | 居室は1人あたり3.3㎡以上 | 1客室7㎡以上(寝台がある場合は9㎡以上) | 合計33㎡以上(宿泊者10人未満の場合は3.3㎡×定員数) |
| 玄関帳場(フロント) | 設置義務なし | 必要(一定の要件を満たせば代替可) | 原則不要(自治体条例等を要確認) |
| 宿泊者の本人確認 | 対面またはICT等で本人確認 | 対面またはICT等で本人確認 | 対面またはICT等で本人確認 |
| 苦情対応 | 適切かつ迅速に対応 | 努力義務 | 努力義務 |
👉住宅宿泊事業(民泊新法)は届出制で営業日数が年間180日以内に制限されるのに対し、旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所)は許可制であり、営業日数の制限がなく通年営業が可能である点が主な違いです
保健所への事前相談

では、具体的に保健所ではどのような事前相談を行うのでしょうか。
営業形態の確認
まず、どの営業形態で民泊を行うのかを明確にしましょう。住宅宿泊事業(民泊新法)なのか、旅館業(旅館・ホテル営業・簡易宿所営業)なのかによって、必要な手続きや確認事項が変わります。
施設の構造と設備
◇ 居室の面積
宿泊者一人当たりに必要な居室の床面積が定められています。例えば、住宅宿泊事業では1人あたり3.3平方メートル以上必要です。
◇ 換気、採光、照明
適切な換気設備、採光、照明があるかを確認します。
◇ 入浴設備、洗面設備、便所
宿泊者の需要を満たす規模の入浴設備、洗面設備、便所が設置されているかを確認します。
建築基準法と消防法
◇ 用途地域
民泊を行う場所が、建築基準法で定められた用途地域に合致しているかを確認します。例えば、ホテルや旅館は、第一種住居地域など、限られた用途地域でしか営業できません。
| 許容される用途地域(主な特徴) | |
| 住宅宿泊事業(民泊新法) | 「住宅」を利用するため、工業専用地域を除くほぼ全ての用途地域で営業可能です。住居専用地域でも運営できる点が大きな特徴です。 |
| 旅館業(旅館・ホテル営業) | 住居専用地域、工業地域、工業専用地域では原則営業できません。主に第一種・第二種住居地域、準住居地域、商業系地域などで許可されます。 |
| 旅館業(簡易宿所) | 旅館・ホテル営業と同様に、住居専用地域、工業地域、工業専用地域では原則営業できません。ただし、自治体によっては条例で緩和措置がある場合もあります。 |
◇ 消防設備・安全措置
営業形態や建物の規模・構造等に応じて、消火器、自動火災報知設備、誘導灯などの消防設備や、非常用照明器具などの安全措置が必要となる場合があります。必要な設備等は物件ごとに異なるため、事前確認が必要です。
◇ 消防法令適合通知書
消防法令に適合していることを証明する「消防法令適合通知書」が必要になります。
衛生管理
民泊(住宅宿泊事業法、旅館業法)における衛生管理の主な項目を以下にまとめます。
◇ 清掃・換気
定期的な清掃と換気を行うことが必要です。また、ねずみや昆虫などの防除を適切に実施します。
◇ 寝具・リネン
布団カバー、敷布、寝衣、枕カバー等、宿泊者に直接触れるものは、客(宿泊者)ごとに洗濯したものと取り替える必要があります。
◇ 水回りの管理
洗面所、浴室、便所は常に清潔に保つ必要があります。浴槽の湯をろ過器で浄化する場合は、ろ過器や配管内部の消毒が求められます。
また、加湿器を備え付ける場合は、宿泊者が入れ替わるごとに水を交換し、定期的に洗浄等を行います。
◇ 感染症対応
宿泊者が重篤な症状を引き起こすおそれのある感染症に罹患またはその疑いがある場合は、保健所に通報し、その指示を受けて消毒・廃棄などの措置を講じる必要があります。
地域ごとの条例
◇ 営業日数
条例によっては、住宅宿泊事業の営業日数が180日より短く制限されている場合があります。
◇ 構造設備基準
地域の条例によって、構造や設備に関する基準が異なる場合があります。
◇ 周辺環境
学校や児童福祉施設から一定距離内での営業が制限される場合があります。
マンションの場合
◇ 管理規約
マンションで民泊を行う場合は、管理規約で民泊が禁止されていないかを確認する必要があります。
◇ 居住者との動線
一般居住者と宿泊者の動線が混ざらないように配慮する必要がある場合があります。
その他
◇ 水質検査
水道水以外を使用する場合は、水質検査が必要となる場合があります。
◇ 景観条例
地域によっては、景観に関する条例で規制されている場合があります。
事前相談内容

旅館業の営業許可申請にあたっては、営業予定地を管轄する保健所等への事前相談を行い、施設の構造設備や営業計画などを確認します。さらに名古屋市では、営業許可申請前に「事前協議」が必要です。事前協議では、営業計画の公表や周辺住民への説明等、条例に基づく手続きを行います。
一方、住宅宿泊事業(民泊新法)についても、名古屋市では届出前に図面を準備し、管轄保健センターへ事前相談を行います。届出住宅の範囲や面積、安全措置、管理方法などを確認したうえで、消防署への相談等を進めます。また、届出前に周辺地域の住民への事前周知を行い、必要な書類を整えたうえで、最終的に民泊制度運営システムを利用してオンラインで届出を行います。
まとめ
これらの確認事項を事前に保健所と相談することで、民泊運営をスムーズに進めることができます。特に、旅館業の許可申請は、建築基準法や消防法など複数の法令が絡むため、専門的な知識が必要になる場合があります。そのため、物件の状況に応じて、建築関係部署、消防署、都市計画関係部署など、関係機関への確認も必要となります。
保健所への事前相談では、施設の図面やマンションの管理規約などを持参し、具体的な相談をすることで、よりスムーズな手続きが可能になります。また、営業開始後も、宿泊者名簿の作成、衛生管理の徹底など、守るべき義務があります。
3問クイズにチャレンジ!
民泊・旅館業の基本について、3問のクイズに挑戦してみましょう!
民泊専用の投資物件として新築した戸建住宅で、これまで誰も居住したことがありません。 この住宅で住宅宿泊事業(民泊新法)を始める場合、正しいものはどれでしょうか?
住宅宿泊事業を行う住宅は、台所・浴室・便所・洗面設備を備えるという 「設備要件」に加え、 「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」 「入居者の募集が行われている家屋」 「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」 のいずれかに該当する「居住要件」を満たす必要があります。
民泊専用の投資物件として新築され、居住といえる使用履歴がない住宅は、 「随時居住の用に供されている家屋」には該当しません。
住宅宿泊事業(民泊新法)を行う住宅に家主本人が居住しています。 ただし、宿泊者が使用する「居室」が6室あります。 この場合、住宅宿泊管理業者への委託について正しいものはどれでしょうか?
住宅宿泊事業では、届出住宅の「居室」の数が5を超える場合や、 宿泊者がいる間に住宅宿泊事業者が不在となる場合 (一定の一時的な不在を除く)は、 原則として住宅宿泊管理業者へ管理業務を委託する必要があります。
そのため、家主居住型であっても、宿泊者が使用する居室が6室ある場合には、 原則として委託が必要です。
反復継続して宿泊者を受け入れ、「宿泊料」という名称では料金を受け取らず、 「光熱水道費」「室内清掃費」などの名目で宿泊の対価を受け取る場合、 旅館業法上どのように扱われるでしょうか?
旅館業法上の「宿泊料」は、料金の名称だけで判断されるものではありません。
休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、 室内清掃費などであっても、 実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる場合は「宿泊料」に含まれます。 (厚生労働省「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」)
OSAHIRO行政書士事務所では、名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県を中心に、民泊新法の届出・旅館業許可申請をサポートしています。民泊新法・旅館業許可に関する豊富な申請実績を活かし、物件の状況や営業方法を確認したうえで、必要な手続きや申請の進め方をご案内します。ご依頼をご検討の方は、下記よりお問い合わせください(初回面談は無料です)。
ご参考
旅館業許可や民泊新法に関する関連記事・動画をご紹介します。
民泊・旅館業|関連記事
「OSAHIROブログ」では、民泊新法の届出や旅館業許可に関する情報を、関連記事で詳しくご紹介しています。
民泊新法の届出・手続き
・「民泊」を始めるにあたり、保健所への事前相談は何を行うのか?
・民泊新法(住宅宿泊事業法)届出の流れと必要書類を徹底解説!
消防・建築の基準と安全対策
民泊を始める前に
・「旅館業法」と「民泊新法(住宅宿泊事業法)」の違いを分かりやすく解説!
・用途地域で失敗しないために!行政書士が解説する民泊新法の注意点
旅館業許可
民泊チャンネル(動画)
YouTube「民泊チャンネル by OSAHIRO行政書士事務所」では、民泊新法や旅館業許可のポイントを動画でわかりやすくご紹介しています。
民泊新法
・「民泊」を始めるにあたり、保健所への事前相談は何を行うのか?