日本で民泊事業を始め、経営者として日本に滞在したい外国人の方にとって、選択肢の一つとなるのが、在留資格「経営・管理」(経営管理ビザ)です。経営管理ビザは、日本で事業の経営や管理を行う外国人を対象とした在留資格です。民泊事業についても、一定の要件を満たせば取得できる可能性があります。ただし、2025年10月16日に経営管理ビザの許可基準が改正され、資本金等の額、常勤職員の雇用、学歴・職歴などの要件が厳格化されました。
また、民泊事業を行う場合は、経営管理ビザの要件だけでなく、住宅宿泊事業法や旅館業法などに基づく手続きも必要です。
ここでは、民泊事業で経営管理ビザを取得するための主な要件や、日本在住者と海外在住者の違い、民泊の許認可とビザ申請の進め方について解説します。
民泊事業で経営管理ビザを取得するための基本要件

民泊事業で経営管理ビザを取得するには、実際に事業を経営することに加え、事業所の確保、資本金等、常勤職員の雇用など、複数の要件を満たす必要があります。
① 事業の運営・経営への関与
経営管理ビザは、日本で事業の経営や管理を行う外国人を対象としています。そのため、単に民泊物件を所有して賃料収入を得るだけではなく、申請者自身が事業の経営に実質的に関与していることが重要です。
例えば、次のような活動が考えられます。
- 民泊事業の経営方針や事業計画の策定
- 収支管理や資金調達
- 従業員の採用・管理
- 宿泊施設の運営方針や委託先の管理
清掃や宿泊者対応などの一部業務を外部に委託すること自体が、直ちに問題となるわけではありません。
ただし、すべての運営業務を外部に委託し、申請者自身が実質的な経営活動を行っていない場合は、経営管理ビザの対象となる活動に該当するか慎重な判断が必要です。
② 事業の安定性・継続性
民泊事業を安定的・継続的に運営できる見込みがあることも重要です。
民泊事業では、物件の立地、宿泊需要、営業可能日数、宿泊料金、運営経費などによって収益が大きく変わります。そのため、具体的な収支計画を作成し、継続的に事業を運営できることを説明する必要があります。特に、住宅宿泊事業法(民泊新法)による民泊は、年間の営業日数が180日以内に制限されます。このため、民泊新法による事業だけで十分な収益を確保できるか、慎重に検討することが重要です。
また、2025年10月の改正により、在留資格の決定時に提出する事業計画書については、原則として中小企業診断士、公認会計士、税理士など、所定の専門家による確認が必要となりました。
③ 事業所の確保
日本国内に、事業を行うための事業所を確保する必要があります。
事業所は、実際に経営活動を行う場所であることが求められ、住所だけを借りるバーチャルオフィスなどは、通常、事業所として認められません。
また、2025年10月の制度改正後は、自宅を事業所と兼ねることは、原則として認められない取扱いとなっています。住居部分と事業所部分が明確に区分されている場合などは、個別に検討する余地がありますが、区分すれば必ず認められるというものではありません。自宅兼事務所を予定している場合は、事前に出入国在留管理局へ確認することが重要です。
なお、民泊施設そのものと、経営活動を行う事業所は、必ずしも同じ場所である必要はありません。
④ 資本金等3,000万円以上
2025年10月16日の改正により、事業の規模に関する基準が引き上げられ、3,000万円以上の資本金等が必要となりました。
法人と個人事業主では、対象となる金額の考え方が異なります。
- 法人の場合: 株式会社の資本金の額、合同会社などの出資の総額
- 個人事業主の場合: 事業所の確保、従業員の給与、設備投資など、事業のために投下されている金額の総額
特に法人の場合、民泊物件の購入費や改装費を支出しただけで、それらを資本金の額に加算できるわけではありません。
資金の準備方法だけでなく、法人の資本金額や出資額が基準を満たしているか確認する必要があります。
⑤ 常勤職員1人以上の雇用
改正後は、1人以上の常勤職員を雇用することが必要となりました。
この常勤職員として認められるのは、原則として次の方です。
- 日本人
- 特別永住者
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
一方、在留資格「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などで在留する外国人は、この常勤職員の人数要件には含まれません。
なお、資本金等3,000万円以上と常勤職員1人以上の雇用は、どちらか一方ではなく、両方を満たす必要があります。
⑥ 日本語能力の要件
申請者または常勤職員のいずれかが、一定以上の日本語能力を有している必要があります。目安となるのは、日本語教育の参照枠におけるB2相当以上の日本語能力です。
例えば、外国人の場合、次のような方法で確認されます。
- 日本語能力試験(JLPT)N2以上
- BJTビジネス日本語能力テスト400点以上
- 日本の大学等の高等教育機関を卒業していること
- その他、出入国在留管理庁が定める要件に該当すること
申請者本人が日本語能力の要件を満たしていない場合でも、要件を満たす常勤職員がいれば対応できる場合があります。
なお、日本語能力の要件における常勤職員の対象範囲は、前述の雇用人数要件とは一部異なります。
⑦ 学歴・職歴の要件
2025年10月16日の改正により、経営管理ビザの申請者には、次のいずれかの要件を満たすことが求められるようになりました。
- 学歴要件: 経営管理または申請する事業に必要な技術・知識に関連する分野の博士、修士、専門職学位を有していること
- 職歴要件: 事業の経営または管理について3年以上の経験を有していること
学歴要件と職歴要件は、どちらか一方を満たせばよく、両方を満たす必要はありません。
なお、通常の大学卒業による学士号のみでは、この学歴要件を満たしません。ただし、学士号のみの場合でも、3年以上の経営・管理経験があれば、職歴要件によって対応できる可能性があります。
⑧ 民泊事業に必要な許認可
民泊事業を適法に運営するためには、事業形態に応じた届出、許可または認定が必要です。
主な制度は次の3つです。
| 事業形態 | 必要な手続き |
|---|---|
| 民泊新法(住宅宿泊事業法) | 住宅宿泊事業の届出 |
| 旅館業法 | 旅館業の営業許可 |
| 特区民泊 | 国家戦略特別区域法に基づく認定 |