
日本で民泊事業を始め、経営者として日本に滞在するための手段の一つが「経営・管理ビザ」の取得です。かつての「投資・経営ビザ」が名称変更されたもので、日本で事業を運営・管理する外国人を対象とした在留資格です。
民泊事業で経営管理ビザを取得するための基本要件
経営管理ビザを取得するためには、民泊事業においても以下の基本的な要件を満たす必要があります。
◇ 事業の運営性
単なる不動産投資ではなく、積極的に民泊事業を運営し、収益を上げる意思と能力が必要です。管理を全て外部に委託するだけでは「事業の運営」とはみなされにくいです。
◇ 事業の安定性・継続性
具体的な事業計画に基づき、安定かつ継続的に事業を運営できる見込みが必要です。
◇ 事業所の確保
日本国内に事業を行うための事務所を確保している必要があります。バーチャルオフィスなど実態のない住所だけでは認められません。自宅兼事務所とする場合は、事業目的で使用する明確な区画が必要です。
◇ 資金要件
500万円以上の資金を有していることが求められます。これは事業を開始し、安定的に運営していくための資本金として見られます。
◇ 適法な事業運営
民泊事業を行うためには、日本の法令に基づいた適切な許認可を得る必要があります。住宅宿泊事業法に基づく届出、旅館業法に基づく許可、または国家戦略特別区域法に基づく認定(特区民泊)のいずれかが必要です。
日本在住者と海外在住者の違い
日本在住の方 | 海外在住の方 | |
物件契約 / 会社設立 | ・不動産賃貸契約や会社設立の手続きを比較的スムーズに進めやすい。 ・法人契約への変更も行いやすい。 | ・物件契約や会社設立の手続きが困難な場合が多い。 ・住民登録がないため印鑑証明書が発行されず、手続きが滞る可能性があります。 ・日本に信頼できる協力者がいる場合は手続きを進めてもらうケースが多い。 |
銀行口座開設 | ・日本の銀行口座を開設しやすい。 ・事業用の口座開設も比較的スムーズに進められる可能性があります。 | ・日本国内の銀行口座開設が難しい場合があります。 ・短期滞在ビザでは口座開設が制限されることが多いです。 ・資本金の払い込みも、協力者の口座を利用するなどの工夫が必要になることがあります。 |
許認可取得 | ・日本の行政機関とのコミュニケーションが比較的容易であり、許認可に関する相談や申請を進めやすい 。 | ・日本の行政機関との直接的なコミュニケーションが難しいため、日本語能力や日本の法制度に関する知識が必要となります。 |
ビザ申請手続き | ・在留資格変更許可申請を行うことになります。既に日本での生活基盤があるため、生活状況などを証明する書類を準備しやすい場合があります。 | ・在留資格認定証明書交付申請を本国で行い、その後ビザ発給の手続きが必要となります。 ・日本に入国するまでの期間を考慮したスケジュール管理が重要です。 |
注意点 | ・現在の在留資格の種類によっては、経営管理ビザへの変更が難しい場合や、資格外活動許可が必要となる場合があります。 ・民泊事業を行う物件が、現在の在留資格で居住している場所と異なる場合など、注意が必要です。 | ・日本語能力が十分でない場合、生活や事業運営に支障をきたす可能性があります。 ・日本の商習慣や文化への理解も重要です。 ・日本に協力者を見つけることが、手続きを円滑に進める上で非常に重要となります。 ・海外からの送金に関する手続きや手数料にも注意が必要です。 |
ビザ取得と民泊許可のタイミングに関する留意点
経営管理ビザの取得と民泊事業に必要な許可(住宅宿泊事業の届出、旅館業の許可、特区民泊の認定)は、密接に関連しています。
◇ 原則として、民泊事業を行うための許認可を得ていることが、経営管理ビザ申請において有利になります。入国管理局は、「実際に民泊として適法に運営できる体制があるか」を厳しくチェックするため、許認可の取得状況は重要な判断材料となります。
◇ 先に経営管理ビザを取得してから民泊の許認可を得ることも不可能ではありませんが、リスクが高いと言えます。もしビザを取得しても、民泊の許認可が下りなかった場合、事業計画が頓挫してしまう可能性があります。
◇ 理想的な流れとしては、
1.民泊事業を行う物件を選定し、賃貸借契約または購入の手続きを進める
(契約時に民泊としての利用が可能であることを確認することが重要です)
2.民泊事業に必要な許認可の申請準備を進め、可能な範囲で申請を行う
(事前相談なども有効です)
3.具体的な事業計画書を作成する
(許認可取得の見込みや物件情報を反映させます)
4.経営管理ビザの申請を行う
(許認可申請状況や許可証の写しなどを添付資料として提出します)
◇ 特に海外在住の方が日本で新たに会社を設立して民泊事業を行う場合、会社設立と民泊許認可の準備を同時並行で進め、ある程度の目処が立ってから経営管理ビザを申請するのが望ましいでしょう。
まとめ
民泊事業での経営管理ビザ取得は、日本在住者と海外在住者で手続きや注意点が異なります。いずれの場合も、実現可能性の高い事業計画、安定した資金、適切な事業所の確保、そして何よりも法令を遵守した民泊運営の許認可が不可欠です。
海外在住の方が民泊事業で経営管理ビザ取得を目指す場合は、早めに信頼できる協力者を見つけ、計画的に準備を進めることが成功への鍵となります。
ご不明なことがありましたら、名古屋のOSAHIRO行政書士事務所(ビザ申請)の「お問い合せ」よりお気軽にご相談ください。