3階建て戸建ての旅館業申請

3階建ての戸建て住宅を旅館業(民泊を含む)に転用する際には、国民の安全や財産保護を目的とする建築基準法上の様々な規定に留意する必要があります。特に、避難に関する規定は重要です。以下に、主な留意点を示します。

旅館業申請における主な留意点(3階建て戸建て)

留意点概要転用時の注意点
直通階段各階から避難階へ直接通じる階段。途中に扉や長い廊下は不可。3階建て住宅でも原則必要。
竪穴区画階段等の縦方向の空間を他と区画し、煙・炎の拡散を防ぐ。住宅では緩和されるが、旅館業転用時は原則必要。高額な工事費用を伴う場合あり。
階段の寸法階段の幅、蹴上げ、踏面の基準。住宅より旅館・ホテルの方が厳しく、改修が必要な場合がある。
2以上の直通階段災害時に複数の避難経路を確保する規定。宿泊室面積が一定規模(100m²または200m²)を超えると必要。
その他設備非常用進入口、排煙設備、非常用照明など。3階建てに義務付け。特小自火報などでコスト削減の可能性。
建築確認等建築基準法への適合チェックと構造計算書の提出。用途変更面積200m²以下なら建築確認不要に緩和。

直通階段

直通階段とは、3階などの上階から避難階(通常は屋外への出口がある1階)まで、「途切れることなく直接つながっている階段」を指します。旅館業の申請において最も注意すべき点は、「居室(リビング等)を通り抜けなければならない構造」は直通階段と認められないということです。

◇ リビング通り抜けの禁止
2階がワンルームのような構造で、階段を降りて一度リビングの中を通らなければ1階へ降りる階段に到達できない場合、避難時に迷う恐れがあるため不可とされます。

◇ 階段の独立化
階段が部屋によって分断されている場合は、新たに壁や戸を設けて「廊下」を作り、上下の階段を直接つなぐ改修工事が必要になります。

◇ 障害物の排除
階段の途中に避難の妨げとなるような扉がある場合、それらを撤去するか、階段室として独立した空間にする必要があります。

👉各階から避難階へ直行必須で、途中に扉や長廊下は不可

竪穴区画

3階建ての戸建て住宅を旅館業(ホテル・旅館・簡易宿所)として申請する際、安全確保の鍵となるのが竪穴区画です。

◇ 竪穴区画の目的
竪穴区画とは、階段や吹き抜け、エレベーターシャフトなど、建物の床を垂直に貫通する空間(竪穴)を、壁や扉で囲って客室などの他のスペースと分離することです。
その目的は、火災時に発生した炎や煙が「煙突効果」によって上階へ一気に拡散するのを防ぎ、宿泊者が安全に避難できる時間を稼ぐことにあります。

◇ 旅館業申請における重要性
一般的な3階建て住宅(延べ面積200㎡以下)では設置が免除されていますが、3階以上に宿泊室を設ける旅館業(特殊建築物)へ用途変更する場合、設置が義務付けられます。
2019年の建築基準法改正により、延べ面積200㎡未満の3階建てであれば、この竪穴区画を整備することで、本来求められる大規模な「耐火建築物」への改修を伴わずに旅館業の許可取得が可能になりました。

◇ 設置の基準
〈間仕切り壁〉
階段の周囲を囲い、天井裏まで達している必要があります。

扉(戸)〉
緩和措置により、厚さ3mm以上の木製戸(フラッシュ戸等)でも認められますが、「常時閉鎖」するか「火災時に自動閉鎖」する機能が必須です。

👉旅館業申請においては、住宅特例は適用されず、火災時の煙の垂直拡散防止のため竪穴区画の設置が必須で、改修工事が必要です

階段の寸法

一般的な3階建て戸建て(延べ面積200㎡未満)を転用する場合、主に以下の寸法基準を満たす必要があります。

◇ 標準的な階段寸法(小規模施設の場合)
直上階(その階段を利用する上の階)にある居室の床面積の合計が200㎡以下である場合、以下の寸法が適用されます。

〈階段および踊場の幅〉 75cm以上

〈蹴上げ(1段の高さ)〉 22cm以下

〈踏面(1段の奥行き)〉 21cm以上

一般的な木造住宅の階段は、これら旅館業の基準を満たしていないケースが多々あります。もし基準に満たない場合は、階段の架け替えや拡幅といった大規模な改修工事が必要になり、多額の費用がかかる可能性があるため注意が必要です。

◇ 大規模な施設の場合
直上階の居室面積の合計が200㎡を超えるような大規模な建物(一般的な戸建てでは稀ですが)の場合は、より安全性を高めるために以下の厳しい基準が適用されます。

〈階段および踊場の幅〉 120cm以上

〈蹴上げ〉 20cm以下

〈踏面〉 24cm以上

👉旅館業は不特定多数の安全確保のため、階段の幅・蹴上げ・踏面の基準が住宅より厳しく、特に周り階段や螺旋階段改修が必要です

2以上の直通階段

3階建ての戸建て住宅を旅館業(ホテル・旅館・簡易宿所)として申請する場合、火災時の二方向避難を確保するため、原則として「2以上の直通階段」の設置基準が設けられています。

◇ 設置が必要となる基準(客室面積)
建築基準法では、客室がある階の宿泊室の床面積の合計が以下の数値を超える場合、階段を2か所以上設ける必要があります。

〈主要構造部が準耐火構造などの場合〉
宿泊室の面積合計が 200㎡を超える階

〈それ以外の一般的な構造の場合〉
宿泊室の面積合計が 100㎡を超える 階

◇ 戸建て住宅での実情
一般的な3階建て戸建て住宅(延べ面積200㎡未満)の場合、1フロアの客室面積が100㎡や200㎡を超えることは稀です。そのため、この規定は「ほぼ適用なし」とされ、階段が1つでも認められることが一般的です。

◇ 階段が1つの場合の必須条件
階段を増設せず1か所のみとする場合でも、以下の安全措置がセットで求められます。

〈直通階段の連続性〉
階段の途中でリビングや居室を通り抜ける構造(リビングイン階段など)は、避難時に迷う恐れがあるため認められません。

〈竪穴区画の整備〉
3階を宿泊室にする場合、煙の拡散を防ぐために階段部分を壁や戸で囲う「竪穴区画」の設置が義務付けられます。

面積基準をクリアしていれば、既存の階段を独立した「階段室」として適切に改修・区画することで、旅館業の許可取得が可能になります。

👉宿泊室の合計床面積が100㎡(準耐火構造等なら200㎡)を超える階では設置が必要ですが、小規模戸建てでは適用外となることが多いです

その他の設備等

3階建ての建物には、以下の設備設置が義務付けられています。

◇ 非常用進入口
火災時に消防隊が進入するためのもので、一般的には道路に面した窓で代替されます。幅75cm以上、高さ120cm以上、または直径1mの円が内接する大きさが条件です。

◇ 排煙設備
火災発生時に煙を外部に排出するための設備で、住宅では窓と兼用される「自然排煙」が一般的です(旅館業における免除規定あり)。

◇ 非常用照明装置
旅館業申請では、住宅の設置免除規定は適用されず、停電時の避難経路 には設置が必須ですが、床面積30㎡以下の居室については、通路に非常用照明があれば居室内の設置が緩和されます。

◇自動火災報知設備
旅館業の建物は自動火災報知器の設置が義務付けられますが、延べ床面積300㎡未満かつ宿泊室の合計床面積が50㎡以下など一定の要件を満たすことで、簡易な特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)コストを大幅に削減できます。

👉非常用照明装置は、居室面積30㎡以下なら、通路に照明があれば居室の設置は緩和されます

👉自動火災報知設備は、延べ床300㎡未満、宿泊室50㎡以下なら、配線不要の特小自火報でコスト削減可能

建築確認申請・構造計算書

建物の新築や増築、または用途を変更する際には、その建物が建築基準法に適合しているかをチェックする「建築確認」を受け、そのための「建築確認申請」を役所に提出する必要があります。

2019年6月の建築基準法改正により、用途変更部分の床面積が200㎡以下であれば、建築確認申請手続きが不要に緩和されました(以前は100㎡が基準でした)。これは空き家活用を促進するための支援策でもあります。ただし、3階建ての住宅を建てる、または用途変更する場合は、建物の構造上安全であることを示す「構造計算書」の添付が確認申請書類に義務付けられています。

👉延べ床200㎡以下 なら用途変更の確認申請は不要

まとめ

3階建て戸建ての旅館業申請に必要な主要項目(簡易宿所等)は、主に建築基準法と消防法に関わります。

◇ 用途変更
延べ床200㎡以下なら建築確認申請は不要。

◇ 竪穴区画
階段室と客室等を区画する竪穴区画の設置が原則必須となり、既存住宅の緩和は適用されず改修を伴います。

◇ 消防設備
自動火災報知設備の設置が義務です。延床300㎡未満なら、簡易な特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)でコスト削減が可能です。

◇ 避難設備
直通階段の確保、非常用進入口や避難経路への非常用照明の設置が義務です。

申請前には自治体の建築指導課や消防署への事前相談が必須です。

名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所では、名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県を中心に、民泊新法・旅館業法に基づく民泊申請をサポートしています。お客様ごとに異なるご事情やご希望を丁寧にお聞きし、最適な手続きをご提案します。豊富な申請実績を活かし、スムーズな許可取得をお手伝いします。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。

参考:民泊申請の説明動画

民泊申請の概要、注意点について、動画でわかりやすくご紹介します。

【民泊情報】

・「民泊」を始めるにあたり、保健所への事前相談は何を行うのか?

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【旅館業】

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