
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、日本で働く外国人にとって一般的な就労ビザです。このビザを取得することで、理学、工学、人文科学、国際業務など、幅広い分野での活動が可能になります。今回は、ビザ申請に必要な書類について、わかりやすく解説します。
申請の種類と必要書類

技術・人文知識・国際業務ビザの申請に必要な書類について、申請の種類別に以下の表に示します。雇用主である企業の規模(カテゴリー)によって提出書類が異なるため注意が必要です。
書類内容 | ダウンロード先 / 入手先 | 認定 | 変更 | 更新 | 備考 | |
申請書 | ・在留資格認定証明書交付申請書 ・在留資格変更許可申請書 ・在留期間更新許可申請書 | 出入国在留管理庁のウェブサイトまたは地方出入国在留管理局 | ● | ● | ● | ・申請の種類に応じた様式を使用します。 |
写真 | 縦4cm×横3cm。申請前3ヶ月または6ヶ月以内に撮影されたもの。 | ― | ● | ● | ● | ・申請書に貼付します。 |
パスポート及び在留カード | ― | ― | ● | ● | ・窓口で提示します。 | |
企業のカテゴリー証明書類 | ・上場企業:四季報の写し等 ・その他:前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) | 各企業で用意 | ● | ● | ● | ・カテゴリー1~4で提出書類が異なります。 |
学歴・職歴の証明書類 | ・大学等の卒業証明書 ・履歴書 ・在職証明書(実務経験を要する場合) | 卒業した学校、過去の勤務先 | ● | ● | ・更新では原則不要です。転職後の初回更新では必要になる場合があります。 | |
活動内容を明らかにする書類 | ・労働契約書や労働条件通知書など | 雇用主企業 | ● | ● | ・転職後の初回更新では必要になる場合があります。 | |
事業内容を明らかにする書類 | ・会社案内、パンフレット等 | 雇用主企業 | ● | ● | ・カテゴリー3, 4の企業で必要です。転職後の初回更新でも求められることがあります。 | |
登記事項証明書 | ― | 法務局 | ● | ● | ・カテゴリー3, 4の企業で必要です。転職後の初回更新でも求められることがあります。 | |
決算文書 | ・直近年度の決算文書の写し ・新規事業の場合は事業計画書 | 雇用主企業 | ● | ● | ・カテゴリー3, 4の企業で必要です。転職後の初回更新でも求められることがあります。 | |
住民税の課税・納税証明書 | ・1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの。 | 1月1日時点に居住していた市区町村役場 | ● | ・カテゴリー3, 4の企業では必須です。 | ||
返信用封筒/はがき | ・認定:切手を貼付した返信用封筒 ・変更/更新:返信用はがき | 申請者 | ● | ● | ● | ・結果通知に使用されます。 |
◇ 申請の種類による違い
<認定:海外から呼び寄せ>
海外にいる外国人を呼び寄せるための申請です。最も多くの書類が必要となります。
<変更:留学生の就職など>
国内にいる留学生などが就職する際に行う申請です。認定申請とほぼ同様の書類が必要です。
<更新:在留期間の延長>
同じ会社で働き続ける場合、提出書類は大幅に簡略化されます。ただし、転職後の初回更新は、新規申請とほぼ同等の書類(雇用契約書、会社の事業内容資料など)が必要になるため注意が必要です。
◇ 企業のカテゴリー
雇用主である企業の規模によって提出書類が簡略化されます。カテゴリー1(上場企業など)は最も少なく、カテゴリー4(新設会社など)は最も多くの書類が求められます。
◇ その他
上記は基本的な書類であり、審査の過程で追加資料の提出を求められることがあります。
👉海外から呼ぶ際は「認定」、留学生などは「変更」、延長は「更新」を申請します
申請人(外国人)が準備する書類
書類名 | 備考 |
在留資格認定証明書交付申請書 | 法務省のウェブサイトからダウンロード |
写真 | 縦4cm×横3cm、申請前6ヶ月以内に撮影、無帽、無背景 |
パスポートおよび在留カード | 提示 |
卒業証明書 | 大学、短期大学、専門学校の卒業を証明するもの |
職務経歴書 | 過去の職務経験を記載 |
労働条件を明示する文書(労働契約書など) | 雇用条件、給与、雇用期間などが記載されているもの |
履歴書 | ― |
専門士・高度専門士の称号を証明する文書 | 専門学校卒業者の場合 |
👉申請書、写真、パスポートと在留カードのほか、学歴や職歴を証明する卒業証明書や履歴書などが必要です
企業・団体が準備する書類
技術・人文知識・国際業務ビザの申請において、所属機関(企業など)はその規模に応じて4つのカテゴリーに分類され、企業の状況を示す提出書類が異なります。規模が大きいほど提出書類は簡略化されます。
カテゴリー | 主な該当機関 | 企業の状況を示す主な提出書類 |
カテゴリー1 | ・上場企業 ・国・地方公共団体 ・独立行政法人など | ・四季報の写しまたは上場を証明する文書 ・主務官庁からの設立許可証明書 |
カテゴリー2 | ・前年分の源泉徴収税額が1,000万円以上の団体・個人など | ・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 |
カテゴリー3 | ・前年分の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) | ・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 ・登記事項証明書 ・事業内容を明らかにする案内書 ・直近の年度の決算文書 |
カテゴリー4 | ・上記のいずれにも該当しない団体・個人(新設会社など) | ・登記事項証明書 ・事業内容を明らかにする案内書 ・直近の年度の決算文書(新規事業の場合は事業計画書) ・法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする資料(給与支払事務所等の開設届出書の写しなど) |
👉上場企業などは提出書類が簡略化され、中小企業や新設会社は決算文書や事業内容を明らかにする案内書など、より多くの書類提出が必要です
転職時の注意点
転職した場合、以下の点に注意が必要です。
◇ 所属機関に関する届出
転職後14日以内に入管へ届け出が必要。
◇ 業務内容の一致
転職先の業務内容が「技術・人文知識・国際業務」ビザの範囲内であるか確認。
◇ 就労資格証明書
転職先の業務内容がビザの範囲内か不明な場合、事前に「就労資格証明書」を取得することが推奨されます。
◇ 在留資格変更許可申請
転職先の業務内容が現在のビザの範囲外である場合、事前に「在留資格変更許可申請」が必要。
👉転職後14日以内に出入国在留管理局への届出が義務で、新しい仕事がビザの範囲内か確認するため、就労資格証明書の取得が推奨されます
申請のポイント
◇ 学歴・職歴と業務内容の関連性
学歴や職務経験と、これから行う業務内容が関連していることが重要。
◇ 十分な業務量
業務量が安定していることが求められます。
◇ 提出書類の有効期限
提出する書類は、原則として発行から3ヶ月以内のものが必要です。
◇ 理由書
審査官にアピールするために、理由書を提出することがおすすめです。
👉大学等の専攻と職務内容の関連性、日本人と同等以上の報酬、単純作業ではなく専門的な業務であることが重要です
必要な届け出
以下の届け出は、外国人の方が日本で適法に在留するために必要な手続きです。 届け出を怠ると、在留資格の取り消しや罰金などの対象となる場合がありますので、必ず期間内に行うようにしてください。
所属機関に関する届け出
技術・人文知識・国際業務ビザでは、外国人本人と企業の双方に届出義務があります。
外国人本人の義務
出入国在留管理局へ 契約内容に変更があった場合、事由発生から14日以内に「所属機関に関する届出」が必要です。届出はオンライン、郵送、窓口で可能です。これを怠ると、在留資格の更新で不利になったり、罰金の対象となる場合があります。
◇ 退職したとき(転職先未定)
「契約機関との契約が終了した場合の届出」を提出します。
◇ 転職したとき
退職日と入社日が近い場合は「契約終了と新たな契約締結の届出」を、期間が空いた場合は新しい会社で働き始めた日に「新たな契約機関と契約を締結した場合の届出」を提出します。
◇ その他
会社の名称・所在地変更や消滅の場合は、その旨の届出が必要です。
事業主(企業側)の義務
外国人を雇用した時と離職した時には、「外国人雇用状況の届出」をハローワークへ提出することが法律で義務付けられています。これを怠ると30万円以下の罰金が科される可能性があります。
住居地に関する届け出
◇ 届出が必要な場合
•日本に入国後、住居地を定めた場合
•引っ越しなどで住居地を変更した場合
これらの届け出は、在留カードの記載事項に変更があった場合に必要となる手続きです。
在留カード記載事項変更届け出
◇ 届出が必要な場合
•在留カードの住居地以外の項目(氏名、国籍など)に変更があった場合。
👉転職や退職をした際は14日以内に所属機関に関する届出が必要です
👉雇用主も外国人の雇用開始・終了時にハローワークへの届出が義務付けられています
まとめ
「技術・人文知識・国際業務」ビザを持つ外国人が転職する際、転職後14日以内に入管へ「所属機関に関する届出」が必要です。転職先の業務内容がビザの範囲内であるか確認し、不明な場合は「就労資格証明書」の取得を検討してください。範囲外の業務を行う場合は、事前に「在留資格変更許可申請」が必要です。「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請は、準備する書類が多く、複雑に感じるかもしれません。しかし、事前にしっかりと準備することで、スムーズなビザ取得が可能です。
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所は外国人のビザ申請をサポートしています。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。
ご参考:技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務)の説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。
・”Engineer/Specialist in Humanities/International Service” Visa