
日本で自分のビジネスを始めたい、会社の経営や管理に携わりたい外国人の方にとって、「経営・管理」の在留資格(ビザ)は非常に重要です。このビザを取得することで、日本に滞在しながら事業活動を行うことができるようになります。
「経営・管理ビザ」は、他の就労ビザと比べて取得が難しいと言われることもありますが、必要な要件や注意点をしっかりと理解し、適切な準備を行えば取得は十分に可能です。
ここでは、事例にてポイントを説明します。
経営・管理ビザ取得の主な注意点
経営・管理ビザを取得するためには、主に以下の点が審査されます。
注意点 | 説明 |
事業所の確保 | ・日本国内に事業を営むための事務所があることが必要です。 ・自宅兼事務所やシェアオフィスを利用する場合は、事業スペースが明確に区分されているか、事務所として機能する設備があるかなどが厳しくチェックされます。 |
事業規模 | ・500万円以上の資本金(出資総額)常勤の従業員が2名以上いること、あるいはこれらに準ずる規模が必要です。 |
資金の出所証明 | ・資本金が500万円以上の場合、その資金をどこからどのように準備したのかを具体的に証明する必要があります。 ・不正な資金ではないかなど、出所が厳しく審査されます。 |
事業の継続性・安定性 | ・事業が安定して継続的に行われる見込みがあることが重要です。 ・具体的な事業内容や取引先、収支の見込みなどを盛り込んだ事業計画書が審査の要となります。 |
経営または管理の経験 | ・事業の管理に従事する場合は、原則として事業の経営または管理について3年以上の経験が必要です(大学院で経営・管理を専攻した期間も含む)。 ・また、日本人と同等額以上の報酬を受ける必要もあります。 |
事例から学ぶ!許可・不許可のポイント
事務所の確保

◇ 不許可事例
有限会社の事業経営として申請。事務所と指定した場所は申請者の自宅と思われ、調査の結果、郵便受けや玄関に会社の標識がなく、室内も日常生活品のみで事務所設備が見当たらなかった。従業員の給与簿などもなかったため、事業所が確保されているとは認められず不許可。
◇ 許可事例
株式会社の販売事業として申請。事務所兼自宅だったが、事務所と住居の入り口が別々で、事務所入り口には会社の標識があり、内部にはパソコンなどの事務機器が設置されていた。これにより事務所として認められ許可。別の許可事例では、賃貸契約の使用目的が「住居」だったが、貸主との特約で「事務所」として使用することが認められていたため許可。
◇ ポイント
自宅の一部を事務所とする場合、住居スペースを通らずに事務所に行ける構造が望ましいです。看板設置や事務機器の準備など、外から見ても、中に入っても事業所だとわかる状態にするのが重要です。経営・管理ビザの「事務所」要件について、要点を表にまとめます。
項目 | 要件と注意点 |
独立性 | ・事業専用の独立空間。 ・壁等で物理的に区分必須。簡易仕切り不可。 |
場所 | ・専用物件または戸建て自宅兼 (別入口/経路推奨)。集合住宅自宅兼は困難。 |
設備・表示 | ・看板や標識、PC等事務機器が必要。 |
契約・立証 | ・法人名義契約が原則。 ・自宅兼(賃貸)は貸主同意必須。 ・写真・図面で実態を立証。 |
事業の継続性・安定性(経営状態)

◇ 不許可事例
経営管理ビザの更新申請。直近の決算書で売上総損失が発生し、当期損益が赤字で欠損金が資本金の約2倍あった。この財務状況では事業の継続性がないと判断され不許可。
◇ 許可事例
経営管理ビザの更新申請。直近の決算書で当期損失はあったものの、債務超過にはなっていなかった。起業して間もない第1期決算であった事情も考慮され、継続性が認められて許可。別の許可事例では、初年度が役員報酬0円、売上0円の状態での更新申請でも許可されたケースもあります。
◇ ポイント
赤字が続くと更新が難しくなりますが、債務超過でない場合や、赤字の理由と今後の改善計画を具体的に説明することで許可されることもあります。更新時には、売上・利益・納税額の安定性や、従業員雇用なども評価の対象となります。主な要件と注意点を以下にまとめます。
項目 | 要件・注意点 |
事業計画 | ・内容に具体性・実現可能性があり、客観的に立証可能であること(取引先契約等も補強資料)。 |
経営実績 | ・過去の経営経験、協力者の存在、関連学歴等があれば有利。 ・更新時は直近の決算内容(売上・利益、債務超過の有無)が重要。 |
事業規模 | ・資本金500万円以上または常勤従業員2名以上のいずれか。 ・資本金の出所証明は必須。 |
適正性・納税 | ・必要な許認可を取得していること。 ・従業員を雇用する場合は労働・社会保険に加入。 ・法人税・本人所得税等の納税状況。 |
複数名での取得
◇ 許可事例
外国人A(出資500万円)とB(出資500万円)が資本金1000万円の会社を設立。AとBはそれぞれ専門分野の業務を担い、経営方針は共同で決定。二人とも経営管理ビザが認められました。別の事例では、出資額はAが800万円、Bが200万円でしたが、AとBで明確な役割分担があったケースも許可されています。
◇ ポイント
複数名でビザを取得するための主な注意点(許可のポイント)は以下の通りです。
注意点 | 概要 |
出資額 | ・経営管理ビザを取得したい外国人役員それぞれが、最低でも500万円以上の出資をしていることが推奨されます。 ・共同経営者のうち一人の出資額が500万円未満であっても、他の共同経営者との合計額が500万円以上であり、かつそれぞれの専門性や明確な役割分担、事業全体の必要性などが総合的に評価され、許可されるケースも存在します。 |
業務の専門性の違い | ・それぞれの役員に専門的な知識や経験があり、担当する業務が明確に分かれていることが必要です。 ・それぞれの専門性を活かして異なる重要な業務を担うことが、事業の安定・継続に繋がると判断されることがあります。 ・担当地域で分けるケースもあります。 |
十分な業務量 | ・全体的な業務量が非常に多いことが必要です。 ・売上が大きく、従業員数も多い場合など、それぞれの経営者に大きな業務量や責任があると認められやすくなります。 ・業務量が少ない場合は、経営者が二人いる必要性を認められない可能性が高いです。 |
二人とも経営決定権を持つ | ・共同経営者として、ともに話し合い、経営方針を決定する権限を持っていることがポイントです。 ・一人に経営の決定権がない場合、他の就労ビザで十分と判断される可能性があるためです。 |
相当額の報酬 | ・それぞれの外国人経営者に対し、相当額の役員報酬が支払われる必要があります。 |
まとめ
経営・管理ビザの取得は、事業所の準備、資金の証明、そして何よりも事業の継続性を示す綿密な事業計画書が鍵となります。特に、自宅を事務所にする場合や、複数人でビザを取得したい場合は、詳細な要件確認と十分な立証資料の準備が必要です。
ご参考:経営管理ビザの説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所は外国人のビザ申請をサポートしています。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。