民泊に必要な消防設備の設置基準

民泊(住宅宿泊事業)を開始する際には、消防法建築基準法に基づく消防設備の設置は宿泊者の安全確保のために非常に重要です。必要な設備は、物件の種類(戸建て、共同住宅、長屋)や運営形態(家主居住型・不在型、民泊部分の面積)によって異なります。

建物用途の分類

消防法において、民泊施設の用途は火災危険性に応じて以下の3種類に分類されることがあります。

◇ 共同住宅(⑸項ロ)
一般的なアパートやマンションなど、複数の住戸が住宅として使用されている建物の用途です。住宅宿泊事業(民泊)を行う住戸が「家主居住型」で宿泊室の床面積の合計が50㎡以下の場合、その住戸は引き続き一般住宅として扱われ、建物全体が⑸項ロに留まることがあります。

◇ 宿泊施設((5)項イ)
旅館、ホテル、宿泊所など、宿泊サービスを提供する建物の用途です。戸建て住宅全体を民泊として使用する場合や、共同住宅の民泊部分が「家主不在型」である場合、または「家主居住型」でも宿泊室の床面積の合計が50㎡を超える場合は、民泊部分がこの(5)項イとして扱われ、消防法令上の規制が厳しくなります。

◇ 複合用途防火対象物((16)項イ)
建物内に共同住宅(⑸項ロ)と、民泊のように異なる用途(宿泊施設(5)項イ)が混在している場合に適用される用途です。共同住宅の一部を民泊として利用し、その民泊部分が宿泊施設((5)項イ)と見なされると、建物全体がこの複合用途として扱われることが多いです。

民泊で必要となる主な消防設備

以下に、民泊で一般的に必要とされる主な消防設備と、その適用条件をまとめた表を示します。具体的な設置基準は、各自治体や消防署によって異なる場合があるため、必ず事前に管轄の消防署に相談してください。

消防設備の種類家主居住型 (宿泊室の床面積合計50㎡以下)」家主不在型」 又は 「宿泊施設(5)項イ扱い」
自動火災報知設備住宅用火災警報器の設置が必要・原則設置

• 延べ面積300㎡未満の戸建て
→「特定小規模施設用自動火災報知設備(簡易無線式)」の設置可能

・共同住宅で延べ300㎡以上500㎡未満かつ民泊部分が10%以下
→「特定小規模施設用自動火災報知設備(簡易無線式)」の設置可能
消火器・設置義務なしだが推奨・延べ面積150㎡以上で必要

・地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上も必要
誘導灯・設置義務なし・原則設置(出入口や通路、階段などに。一定の条件で免除規定あり)
非常用照明器具設置免除原則設置(居室の面積や外部への開放性などにより免除規定あり)
防炎物品・義務なし・カーテン、じゅうたん等に必要
避難経路図・設置必要 ・設置必要

建築基準法による非常用照明器具

非常用照明器具は、建築基準法に基づいて設置が義務付けられている設備です。停電時などに自動的に点灯し、避難経路や出口を照らすことで、宿泊者が安全に避難できるよう支援します。

◇ 目的と機能
火災などによる停電時でも、一定時間(30分間以上)継続して点灯し、床面において1ルクス以上の照度を確保します。耐熱性を有する構造であることも求められます。

◇ 設置場所
基本的に、宿泊者が長時間滞在する「居室」や「宿泊室」、そして「出口へ出るための避難経路」に設置が求められます。

◇ 免除規定

・家主居住型で宿泊室の床面積合計が50㎡以下の場合、民泊住宅全体で設置が免除されます。

・その他、「外気に開放された通路」や「宿泊室・避難経路以外の部屋」(例: クローゼット、トイレ、洗面所、浴室)には、基本的に設置が不要です。

・居室の床面積、採光に有効な開口部の面積、出口までの歩行距離などの条件を満たす場合も設置が不要となることがあります。

・ただし、居室が免除されても、その先の避難経路(前室や廊下、階段など)が外気に開放されていない場合は、非常用照明の設置が必要となることがあります。

重要な手続きと注意点

民泊を開始する前には、管轄の保健センター(名古屋市の場合)や消防署に事前相談を行うことが非常に重要です。特に消防署では、物件の図面を持参し、消防法令への適合状況の確認と「消防法令適合通知書」の交付申請が必要です。この通知書は、民泊の届出に必要な書類の一つです。

また、消防法は大規模な火災事件が発生するたびに基準が変更されることがあり、特例規定も頻繁に出されているため、専門家と共に、最新の情報を確認し、適切な対応を行うことが推奨されます。不明確な質問は最大限の規制で回答される可能性があるため、具体的な計画を持って相談することが、不必要な設備投資を避ける上で重要です。

民泊運営においては、これらの設備を適切に設置し、維持管理する責任があります。違反した場合は、行政処分や罰則の対象となることがありますので注意が必要です。

参考:民泊申請の説明動画

民泊申請の概要、注意点について、動画でわかりやすくご紹介します。

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