
近年、多様な宿泊ニーズに応える民泊が注目されていますが、その種類によって適用される法令や求められる安全対策が異なります。特に、火災発生時などに重要な役割を果たす非常用照明の設置基準は、民泊の種類や建物の規模によって異なるため、しっかりと理解しておく必要があります。
この記事では、簡易宿所営業、特区民泊、そして住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊の3種類について、非常用照明の設置義務や基準をわかりやすく解説します。
3種類の民泊の概要
まず、それぞれの民泊の概要を簡単に確認しましょう。
◇ 簡易宿所営業
旅館業法に基づく許可を得て運営される宿泊施設。ホテルや旅館よりも簡易的な設備で、比較的安価に宿泊を提供できる。営業日数の制限はありません。
◇ 特区民泊
国家戦略特別区域法に基づき、特定の区域で旅館業法の特例として認められた民泊。通常、2泊3日以上の滞在が条件となる。
◇ 住宅宿泊事業(民泊新法)
住宅宿泊事業法に基づき、年間180日を上限として、住宅を宿泊サービスに提供する事業。届出を行うことで比較的容易に開始できる。
非常用照明に関する比較表
各民泊における非常用照明の設置義務や基準について、以下の表にまとめました。ただし、建物の規模や構造、各自治体の条例によって異なる場合がありますので、必ず管轄の消防署や行政機関に確認してください。
簡易宿所営業 | 特区民泊 | 住宅宿泊事業(民泊新法) | |
法的根拠 | ・建築基準法 ・旅館業法 ・消防法等 | ・建築基準法 ・国家戦略特別区域法 ・消防法等 | ・建築基準法 ・住宅宿泊事業法 ・消防法 ・国土交通省告示第1109号(安全措置)等 |
設置義務の原則 | ・原則として必要。 ・建築基準法に基づき、一定規模以上の特殊建築物(ホテル、旅館、簡易宿所など)の居室や避難経路に設置が義務付けられます。 | ・原則として必要。 ・簡易宿所と同様に、建築基準法に基づき設置が義務付けられると考えられます。 | ・原則として必要。 ・宿泊室及び宿泊室から地上に通ずる避難経路に非常用照明器具の設置が義務付けられています。 |
主な緩和条件 | ・建築基準法に基づく緩和措置が存在します。 ・都道府県や自治体の条例によっても異なる場合があります。 | ・建築基準法に基づく緩和措置が存在します。 ・特区ごとに条件が異なる場合もあります。 | ・以下の条件を満たす場合は設置が不要となる場合があります。 【設置不要となる場所の例】 ◇ 外気に開放された通路 ◇ クローゼット、トイレ、洗面所、浴室など避難に関係のない場所 ◇ 床面積が30㎡以下の居室で、以下のいずれかに該当する場合。 ・直接地上へ出られる ・地上に出られる通路が外気に開放されている ・地上に出られる通路に非常照明器具が設置されている ◇ 1階または2階(避難階、避難階の直上階、直下階)の居室で、以下のすべてを満たす場合 ・1階の場合、部屋から屋外までの道のりが30m以下 ・2階の場合20m以下 ・外から光が入る窓が、床面積の1/20以上の大きさであること ◇ 家主居住型で、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下の場合(一時不在を除く) |
設置基準の概要 | ・床面において1ルクス以上の照度を確保できる直接照明であること(蛍光灯やLEDを使用する場合は、2ルクス以上)。 ・停電時に自動点灯し、一定時間点灯を維持できる予備電源が必要。 | ・簡易宿所営業に準じると考えられます。 | ・停電時に自動的に点灯し、避難経路を確保できる明るさである必要があります。 ・具体的な照度基準は建築基準法に準じます。 ・携帯用照明器具の設置で代替できる場合があります。 |
その他 | ・建物の用途や規模によっては、自動火災報知設備やスプリンクラー設備の設置も求められる場合があります。 | ・特区ごとに、防火に関する条例や指導が異なる場合があります。 | ・共同住宅の場合、民泊を行う住戸の床面積が100㎡以下であることや、宿泊室から直接外部または避難上有効なバルコニーに至ることができるなどの要件を満たすことで、誘導灯の設置が免除される場合があります。 ・廊下に非常用照明装置を設置するか、各宿泊室に携帯用照明器具を設置することでも、同様に誘導灯が免除される場合があります。 |
具体的な事例
簡易宿所営業(戸建て2階建て、延べ床面積80㎡)
この場合、建築基準法に基づき、原則として各居室と避難経路に非常用照明の設置が必要となります。ただし、1階の居室で直接屋外に出られる出口があり、その出口までの距離が短いなどの条件を満たせば、一部設置が免除される可能性もあります。
特区民泊(マンションの一室、床面積35㎡)
特区民泊も建築基準法が適用されるため、原則として非常用照明の設置が必要です。ただし、床面積が30㎡以下で、直接地上への出口がある場合や、避難経路に非常用照明が設置されている場合は、設置が不要となることがあります(住宅宿泊事業法の緩和規定に準ずる可能性がありますが、特区の規定を確認が必要です)。
民泊新法(戸建て2階建て、家主不在型、延べ床面積120㎡、各宿泊室の床面積は25㎡以下)
このケースでは、家主不在のため、原則として各宿泊室と避難経路に非常用照明が必要です。30㎡以下の宿泊室で、直接屋外へ避難できるか、避難経路に非常用照明がある場合は、個室内の設置が免除されることがあります。避難経路が複雑な場合は、誘導灯の設置も検討が必要です。
民泊新法(マンションの一室、家主居住型、民泊に供する床面積40㎡)
この場合、家主居住型で、民泊に供する床面積が50㎡以下であるため、非常用照明の設置は原則として不要となります。ただし、避難経路に著しく採光が不足しているなどの場合は、携帯用照明器具の設置などが求められることがあります。
注意点
◇ 上記は一般的な情報であり、個々の物件の状況や各自治体の条例によって適用される基準が異なります。必ず事前に管轄の消防署や行政機関に相談し、正確な情報を得るようにしてください。
◇ 非常用照明器具の設置や配線工事には、電気工事士の資格が必要となる場合があります。専門業者に依頼することを推奨します。
◇ 非常用照明器具だけでなく、住宅用火災警報器の設置も義務付けられています。建物の規模によっては、自動火災報知設備や消火器、誘導灯、防炎物品の使用なども必要になります。
◇ 民泊の届出時には、安全措置に関する図面の提出が求められます。非常用照明器具の設置位置などを正確に記載する必要があります。
まとめ
民泊運営における非常用照明の設置は、宿泊者の安全を確保する上で非常に重要な対策です。今回ご紹介した情報を参考に、ご自身の民泊の種類や物件の状況に合わせて、適切な非常用照明を設置・管理するように心がけてください。安全・安心な民泊運営で、ゲストに快適な滞在を提供しましょう!
名古屋の「OSAHIRO行政書士事務所」では、民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づいた届出をはじめ、様々なご相談をお受けいたします。ご不明なことがありましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。