深刻化する介護業界の人手不足
日本では、少子高齢化が急速に進んでおり、介護業界における人手不足は深刻な問題となっています。 厚生労働省のデータによると、2040年には約3万2000人の訪問介護員が不足すると見込まれています。 この状況を改善するために、政府は外国人材の積極的な受け入れを推進しており、その中でも特定技能「介護」は重要な役割を担っています。

特定技能「介護」とは
特定技能とは、日本国内で人手不足が深刻な特定産業分野において、一定の技能と日本語能力を持つ外国人に与えられる在留資格です。特定技能「介護」は、介護分野での人手不足を解消するため、2019年に創設されました。 この資格を持つ外国人は、介護施設や事業所において、日本人と同等の業務に従事することが可能です。
特定技能「介護」の資格取得要件
特定技能「介護」の資格を取得するには、主に以下の4つのルートがあります。
◇ 技能試験と日本語試験に合格(詳細は次項に示します)
•介護技能評価試験
•日本語能力試験(N4以上)または日本語基礎テスト
◇ 技能実習2号を良好に修了
•介護職種の技能実習2号を2年10ヶ月以上修了し、技能検定3級または専門級の実技試験に合格
•試験が免除(技能実習2号を良好に修了)
◇ 介護福祉士養成施設を卒業
•介護福祉士の資格取得
◇ EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者
•一定の要件を満たす必要
👉介護技能評価試験と日本語試験(介護日本語評価試験を含む)に合格するか、介護分野の技能実習2号を良好に修了するなどの方法で取得できます
特定技能「介護」の試験
特定技能「介護」の在留資格を取得するには、原則として技能水準と日本語能力水準の両方を証明する必要がありますが、特定のルート(技能実習2号修了など)では試験が免除されます。
| 項目 | 説明 |
| 技能水準 | ・介護技能評価試験に合格する必要があります。 ・この試験は、CBT方式で実施され、介護の基本や生活支援技術などが出題されます。 ・全45問(学科40問、実技5問)で試験時間は60分、総得点の60%以上が合格基準です。 |
| 日本語能力水準 | 特定技能「介護」の日本語能力水準は、合計で2つの試験の合格が必要です。 ◇ 基礎的な日本語能力の証明 ここでは「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」のどちらか一つに合格すれば問題ありません。 ◇ 介護業務に必要な日本語能力の証明 介護分野に特有の「介護日本語評価試験」に必ず合格することが求められます。 したがって、2つの試験を組み合わせた合格が必要となります。 |
| 試験免除の特例 | ・介護職種の技能実習2号を良好に修了した外国人は、技能試験および日本語試験の合格が免除されます。 ・また、介護福祉士養成施設を修了した場合も、試験が免除されます。 |
特定技能「介護」で対応できる業務

特定技能「介護」で対応できる業務について、最新の方針に基づき、以下に表で示します。
| 業務の区分 | 業務内容(具体的な例) | 備考 |
| 主たる業務(身体介護) | 利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつ、移動、整容、衣服着脱などの介助業務。 | 介護技能評価試験の合格で証明される実践的な知識と技能に基づいて行います。 |
| 付随する支援業務 | 身体介護に付随するレクリエーションの実施、機能訓練の補助(筋力維持、リハビリ、判断力向上などが目的)。 | ― |
| 関連業務 | 上記業務に従事する日本人が通常行う掲示物の管理や物品の補充などの業務に付随的に従事。 | 専らこの関連業務のみに従事することは認められません。 |
| 訪問系サービス | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、居宅訪問型児童発達支援など。 | 2025年4月21日に解禁される予定です。従事には、介護事業所等における原則1年以上の実務経験が必要です。 |
👉利用者の心身に応じた身体介護(入浴・食事・排せつ介助など)や、これに付随する支援業務、関連業務に従事する業務です
特定技能「介護」資格取得の流れ
特定技能「介護」の資格を取得するには、以下のステップを踏む必要があります。
| ステップ | 手続き/要件 | 留意事項 |
| 1. 技能・日本語証明 | 介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語N4相当以上(国際交流基金日本語基礎テスト等)に合格する。 | 技能実習2号修了者や介護福祉士養成施設修了者は試験が免除される。 |
| 2. 雇用契約の締結 | 特定技能所属機関とフルタイム(週30時間以上)で雇用契約を結ぶ。報酬は日本人と同等以上であること。 | 雇用形態は直接雇用に限られる。 |
| 3. 協議会への加入 | 在留資格申請前に、介護分野における特定技能協議会の構成員となることが原則必要である。 | 申請時に協議会構成員であることの証明書が必要となる。 |
| 4. 支援体制の確立 | 1号特定技能外国人支援計画を作成・実施する義務がある(登録支援機関へ委託可能)。 | 支援計画には、生活オリエンテーションや相談対応などの10項目が含まれる。 |
| 5. 在留資格申請 | 地方出入国在留管理局に認定証明書交付申請または変更申請を行い、許可を得る。 | ― |
👉技能試験と日本語試験に合格後、受入れ機関と雇用契約を結び、在留資格申請を経て入国・就労し、定期的な支援を受けながら業務に従事します
在留資格「介護」との比較
特定技能「介護」と在留資格「介護」は、どちらも外国人が日本で介護業務に携わるための在留資格ですが、求められる専門性、在留期間、およびキャリアパスにおいて明確な違いがあります。
特定技能「介護」(1号)は、深刻化する介護分野の人手不足に対応するため、即戦力となる外国人を一定期間(通算5年以内)受け入れることを目的としています。一方、在留資格「介護」は、日本の介護福祉士(国家資格)を取得した高度な専門性を有する外国人が、長期的に就労することを目的としています。以下に、両者の違いを示します。
| 特定技能「介護」 | 在留資格「介護」 | |
| 資格要件 | 技能試験・日本語試験合格 技能実習2号良好修了 | 介護福祉士資格 |
| 在留期間 | 通算5年 | 更新可能、上限なし |
| 業務範囲 | 身体介護、付随する支援業務 (2025年4月から訪問介護も可能) | 介護業務全般 |
| 転職 | 可能 | 可能 |
| 家族帯同 | 不可 | 要件を満たせば可能 |
| 資格取得の難易度 | 比較的容易 | 難しい |
| 活用の柔軟性 | 事業所の状況に合わせて柔軟な活用が可能 | 専門性の高い人材として、より高度な業務を任せられる |
| ライフステージ | 日本人と同様にライフステージの変化がある。 日本人以上に就労が難しくなる可能性もある。 | 日本人と同様にライフステージの変化がある。 |
◇ 在留期間と家族帯同
・特定技能「介護」は在留期間が通算5年に限定されており、原則として家族の帯同は認められていません。
・これに対し、在留資格「介護」は、国家資格に基づいているため在留期間に上限がなく、家族(配偶者や子)の帯同が可能です。これにより、外国人は日本で長期的な生活基盤を築くことができます。
◇ 資格と専門性
・特定技能は、一定の技能試験や日本語試験(N4相当以上)の合格を要件としますが、介護福祉士の資格までは求められません。
・在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格の取得が必須です。
◇ キャリアの移行
・特定技能「介護」で就労している外国人は、日本での実務経験を積み、介護福祉士国家試験に合格することで、在留資格を「介護」へと変更し、在留期間の制限なく日本で働くことが可能です。
◇ 訪問介護業務の扱い
・従来、特定技能「介護」は訪問介護(居宅においてサービスを提供する業務)への従事が認められていませんでしたが、深刻な人手不足への対応として、2025年4月より、特定技能外国人(1号)も一定の条件(例:1年以上の実務経験、初任者研修修了、OJTの実施など)を満たせば、訪問介護業務に従事することが解禁されました。これにより、特定技能の業務範囲は大きく広がりました。在留資格「介護」を持つ者は、以前から訪問介護に従事可能でした。
👉特定技能「介護」は、技能試験と日本語試験合格等で即戦力と認められた人材が、最長5年間、身体介護や2025年4月から解禁された訪問介護等の業務に従事できる在留資格です
👉在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格が必須で専門性が高く、在留期間更新に上限がなく家族帯同も可能で、訪問介護を含む介護業務全般で長期的な活躍が期待される在留資格です
具体例(特定技能「介護」)
事例1:施設における即戦力としての業務
特定技能外国人の主たる業務は、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、病院などの事業所内で行われる身体介護(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)と、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)です。
例えば、技能実習2号を修了して特定技能に移行したインドネシア国籍のAさんは、介護老人福祉施設で身体介護やレクリエーションの企画・実施を担当し、日本人職員と協力しながら業務に取り組んでいます。
事例2:訪問介護業務への従事
2025年4月21日より、特定技能外国人は訪問介護サービス(居宅介護、重度訪問介護、居宅訪問型児童発達支援等)に従事することが可能になりました。
この業務を行うためには、原則として介護事業所等での1年以上の実務経験、介護職員初任者研修課程などの修了、およびキャリアアップ計画の策定などの要件を満たす必要があります。
事例3:キャリアパスとしての活用
介護分野の技能実習2号を良好に修了した外国人が、試験を免除されて特定技能「介護」へ移行し、引き続き即戦力として日本の介護現場で就労を継続するルートは多いです。また、特定技能として就労する間に介護福祉士国家資格を取得すれば、在留資格「介護」へ移行し、在留期間の上限なく日本で働くことができます。
受け入れ施設・事業所の要件

特定技能「介護」の外国人を受け入れる施設・事業所(特定技能所属機関)に求められる主な要件は、以下の通りです。
| 項目 | 要件の詳細 | 根拠となる基準 |
| 事業所要件 | ・介護福祉士国家試験の実務経験として認められる施設・事業所であること。 ・訪問介護は2025年4月21日に解禁(原則、介護事業所等での実務経験1年以上など別途要件が必要)。 | 特定技能基準省令、告示 |
| 雇用形態/待遇 | ・日本人常勤職員と同等以上の報酬を支払い、直接雇用すること。 ・労働者派遣は認められていません。 | 特定技能基準省令 |
| 受入人数上限 | ・受け入れ可能な特定技能外国人の総数は、その事業所にいる常勤の日本人介護職員の総数を超えない水準であること。 | 厚生労働大臣告示 |
| 法令遵守/欠格 | ・労働、社会保険、租税に関する法令を遵守していること。 ・過去1年以内に同種業務の労働者を非自発的に離職させていないこと。 | 特定技能基準省令 |
| 支援体制 | ・10項目からなる支援計画を策定し、適切に実施する義務があること(登録支援機関へ委託可能)。 ・支援に要する費用を外国人に負担させてはならない。 | 支援計画の基準 |
| 協議会への加入 | ・介護分野における特定技能協議会に加入していること。 ・在留資格申請前に加入が原則求められます。 | 厚生労働大臣告示 |
👉介護分野の特定技能協議会に加入し、事業所単位で日本人の常勤職員数を超えない人数を受け入れ、適切な支援計画を立てる必要があります
まとめ
特定技能「介護」は、介護業界の人手不足を解消するための重要な手段です。 この資格を持つ外国人は、介護施設や事業所において、日本人と同等の業務に従事し、利用者の生活を支えることができます。 2025年度には訪問介護への従事も可能となり、今後ますますその活躍が期待されます。
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所は外国人のビザ申請をサポートしています。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。
ご参考:特定技能ビザの説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。





