住宅宿泊事業法(民泊新法)では、宿泊者の安全を確保するための措置が義務付けられています。安全措置が適切に講じられていない場合、民泊の申請は受理されません。安全措置の中でも特に重要な非常用照明器具、防火の区画、住宅の規模に関する措置について説明します。
非常用照明器具の設置

非常用照明器具は、停電時に避難経路を照らし、宿泊者の安全な避難を助けるために不可欠です。
設置場所
宿泊室および宿泊室から地上(共同住宅の場合は住戸の出口)に通じる部分に設置します。採光上有効に外気に開放された部分は除く。
構造基準
建築基準法施行令第126条の5に規定する構造基準に適合する非常用の照明装置である必要があります。具体的には、耐熱性や停電時における点灯性を有するものとして、電球やソケット、電線の種類等が規定されています。JIL適合マークが付いている製品を選ぶと良いでしょう。
◇ 例外
家主居住型で、かつ宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下の場合は、設置義務はありません。
👉家主不在型では、原則として宿泊室とそこから地上への避難経路に非常用照明器具が必要です。ただし、30㎡以下の居室など、一定の条件を満たす場合は設置が不要となることがあります。
防火の区画

複数の宿泊者を同時に宿泊させる場合(同一グループを除く)は、防火区画が重要になります。
防火区画の方法
•宿泊室と避難経路の間を準耐火構造の壁で区画し、壁を小屋裏または天井裏に達せさせる。
•4つ以上の宿泊室が隣接する場合、3室以内ごとに準耐火構造の壁で区画し、壁を小屋裏または天井裏に達せさせる。
•隣接する2つ以上の宿泊室の床面積の合計が100平方メートルを超える場合は、100平方メートル以内ごとに準耐火構造の壁で区画する。
◇例外
宿泊者使用部分が一定の防火安全性能を有する消防の用に供する設備等を設けた場合は、この限りではありません。
👉複数の宿泊室に複数のグループを同時に宿泊させる場合は、防火の区画や警報設備等、一定の安全措置が必要となる場合があります
住宅の規模に関する措置
住宅の規模に応じて、以下の措置が必要になる場合があります。
宿泊室のある階が2階の場合
宿泊者使用部分の床面積の合計を300平方メートル未満とする必要があります。
ただし、耐火建築物または準耐火建築物の場合は、この限りではありません。
宿泊者使用部分が3階以上にある場合
宿泊者が使用する部分(宿泊室、浴室、トイレなど)が3階以上にある一戸建てまたは長屋の場合、原則としてその住宅は耐火建築物である必要があります。
ただし、耐火建築物でない場合でも、例外として、住宅全体の延べ面積が200㎡未満で、以下の2つの基準を満たす場合は、3階に宿泊者使用部分を設けることができます。
1.階段室などの竪穴部分とそれ以外の部分が、間仕切り壁や遮煙性能のある戸で区画されていること(竪穴区画)。
2.警報設備が設置されていること。
👉一戸建て等の場合、宿泊者使用部分の床面積が200㎡以上となる場合は、建物の構造や内装について一定の安全措置が必要となり、3階以上に設ける際は原則耐火建築物にする必要があります
床面積の考え方

床面積は、安全措置の要否を判断する上で重要な要素です。
宿泊室の床面積
宿泊者の就寝の用に供する室の床面積を指します。宿泊室の床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(壁芯)で算定されます。押入れや床の間は含みません。
居室の床面積
居室とは、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室のことです。居室の床面積は、内寸面積で算定されます。押入れや床の間、台所、便所、洗面所、廊下などは含みません。
延べ面積
各階の床面積の合計を指します。建物全体の大きさを表すものです。
👉宿泊室の面積は宿泊者が就寝する室を壁芯で算定し、居室の面積は宿泊者が占有する部分を内寸で算定します
安全措置に関する図面上の記載
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき、宿泊者の安全を確保するために図面上で明示すべき安全措置の記載要領について説明します。
非常用照明器具の設置
非常用照明器具は、停電時に避難経路を照らすための設備です。
◇ 設置場所の明示
宿泊室および宿泊室から地上に通ずる避難経路(共同住宅は住戸出口まで)に設置位置を特定の記号で明記します。採光上有効に外気に開放された部分は除外できます。
◇ 免除の記載
「家主同居型」で宿泊室の床面積合計が50㎡以下の場合は設置が免除されます。免除を受ける居室については、その理由(床面積や採光条件など)を図面内に付記することが求められます。
◇ 器具の仕様
建築基準法の構造基準に適合するもの(JIL適合マーク付など)を選定します。
防火の区画
火災の延焼を防ぐための措置で、1つの住宅に複数のグループを同時に宿泊させる場合(一戸一括貸し切りを除く)に必要です。
◇ 区画壁の記載
宿泊室と避難経路の間、または隣接する宿泊室間を準耐火構造の壁で区画し、その壁を小屋裏や天井裏まで到達させる必要があります。図面にはこの区画壁の位置と構造を明示します。
◇ 緩和措置の表示
自動火災報知設備やスプリンクラーの設置により措置が免除・緩和される場合は、その条件となる設備の設置位置を記載します。
住宅の規模に関する措置
建物の階数や面積に応じた耐火性能の確保が必要です。
◇ 階数の制限
宿泊者使用部分を3階以上に設ける場合、原則として建物が耐火建築物である必要があります。ただし、延べ面積200㎡未満で、警報設備や竪穴区画(遮煙性能のある戸など)の基準を満たせば、設置可能です。図面にはこれらの設備や区画の状況を正確に記載します。
◇ 面積の区分
2階の宿泊者使用部分が300㎡以上の場合は、耐火または準耐火建築物とする必要があります。
床面積の算定と図面記載のルール
図面には寸法と計算式を記載し、基準適合を証明します。
◇ 算定方法の使い分け
居室面積(1人あたり3.3㎡以上必要)は壁の内側で測る「内法面積」で算定します。
一方で、宿泊室面積や宿泊者使用部分は壁の中心線で測る「壁芯面積」で算定します。
◇ 明確な区分
宿泊室、居室、宿泊者使用部分を色分けなどで明確に判別できるようにし、それぞれの算定根拠となる寸法を記入します。
図面作成に当たっては、自治体独自の条例や消防署の指導があるため、事前の相談が不可欠です。
消防法令適合通知書

•消防法令適合通知書は、届出住宅が消防法令に適合していることの確認がされた後に交付されます。事前に管轄の消防署に相談してください。
•各自治体によって異なる条例や規定があるため、詳細な運用は管轄消防署に確認してください。
•届出受理までに時間がかかる場合があるため、余裕をもって届出をしてください。
👉民泊事業の届出では消防法令への適合確認が必要です。消防法令適合通知書の提出など、具体的な手続きについては届出先の自治体や管轄消防署に確認しましょう
まとめ
民泊の安全措置は、宿泊者の安全を守るために非常に重要です。
この記事を参考に、必要な安全措置を確実に実施し、法令を遵守した上で民泊事業を行いましょう。
参考:民泊の安全措置の手引き 国土交通省 住宅局 建築指導課
3問クイズにチャレンジ!
民泊の安全措置について、3問のクイズに挑戦してみましょう!
民泊新法の非常用照明器具について、 正しいものはどれでしょうか?
正解は「家主が不在とならず、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下の場合は、届出住宅全体について非常用照明器具は不要」です。
家主が不在とならず、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下の場合は、届出住宅全体について非常用照明器具の設置は不要です。
一方、30㎡以下の居室についても、面積だけで不要になるわけではなく、 地上への出口や地上までの避難経路など、一定の条件を満たす必要があります。
民泊新法の防火上の安全措置について、 正しいものはどれでしょうか?
正解は「適用除外に該当しない住宅で、複数の宿泊室に複数のグループを同時に宿泊させる場合は、一定の防火上の安全措置が必要となる」です。
適用除外に該当しない住宅で、 複数の宿泊室に複数のグループを同時に宿泊させる場合には、 一定の防火上の安全措置が必要です。
例えば、宿泊室相互を防火上有効に区画する方法のほか、 一定の警報設備や避難条件などを満たす方法があります。 必ず一律に壁で区画するというものではありません。
一戸建て住宅や長屋で民泊を行う場合の安全措置について、 正しいものはどれでしょうか?
正解は「2階以上の各階では、宿泊室の床面積の合計を100㎡以下とすることが原則だが、その階から避難階または地上に通じる2以上の直通階段がある場合は例外となる」です。
一戸建て住宅や長屋では、 2階以上の各階における宿泊室の床面積の合計を100㎡以下とすることが原則です。
ただし、100㎡を超える場合でも、 その階から避難階または地上に通じる2以上の直通階段を設けている場合は、 この基準の適用除外となります。
OSAHIRO行政書士事務所では、名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県を中心に、民泊新法の届出・旅館業許可申請をサポートしています。民泊新法・旅館業許可に関する豊富な申請実績を活かし、物件の状況や営業方法を確認したうえで、必要な手続きや申請の進め方をご案内します。ご依頼をご検討の方は、下記よりお問い合わせください(初回面談は無料です)。
ご参考
旅館業許可や民泊新法に関する関連記事・動画をご紹介します。
民泊・旅館業|関連記事
「OSAHIROブログ」では、民泊新法の届出や旅館業許可に関する情報を、関連記事で詳しくご紹介しています。
民泊新法の届出・手続き
・「民泊」を始めるにあたり、保健所への事前相談は何を行うのか?
・民泊新法(住宅宿泊事業法)届出の流れと必要書類を徹底解説!
消防・建築の基準と安全対策
民泊を始める前に
・「旅館業法」と「民泊新法(住宅宿泊事業法)」の違いを分かりやすく解説!
・用途地域で失敗しないために!行政書士が解説する民泊新法の注意点
旅館業許可
民泊チャンネル(動画)
YouTube「民泊チャンネル by OSAHIRO行政書士事務所」では、民泊新法や旅館業許可のポイントを動画でわかりやすくご紹介しています。
民泊新法
・「民泊」を始めるにあたり、保健所への事前相談は何を行うのか?