
「家族滞在」ビザは、日本で働く外国人や留学生が、その家族を日本に呼び寄せて一緒に生活するための在留資格です。このビザを持つ外国人が日本で就労を希望する場合、特定の条件や制限があります。
家族滞在ビザの取得要件

家族滞在ビザを取得するためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
要件項目 | 概要 |
扶養者との関係 | ・日本に滞在する扶養者の配偶者または子であること。 ・「配偶者」は法律上有効に婚姻が存続している者(内縁関係や同性婚は含まれない)。 ・「子」は実子、養子、認知された非嫡出子を含む。未成年者に限らず、親の扶養を受けている限り成人した子も対象となる場合があるが、成人している場合は扶養の必要性を明確にすることが重要。 ・兄弟や両親は原則対象外。 |
扶養の意思と能力 | ・扶養者には、家族を扶養する意思と、経済的に扶養できるだけの能力があること。 ・被扶養者は扶養者に経済的に依存している状態であること。 ・扶養者の年収が被扶養者の年収を上回るなど、経済的依存が認められる必要がある。 ・扶養能力の明確な基準はないが、月額18万円以上の収入が目安とされることがある。 ・収入、居住地の物価、家賃などを総合的に考慮して審査される。 ・送金履歴のある通帳のコピーなども扶養の証明に役立つ。 |
滞在目的 | ・日本に滞在する主たる目的が就労活動ではないこと。 ・認められるのは「扶養を受ける配偶者または子として行う日常的な活動」であり、これには家事や育児、教育機関での教育を受ける活動などが含まれる。 |
適切な住居 | ・家族で生活するのに適切な広さや間取りの住居が確保されていること。 ・扶養者(呼ぶ側)が現在一人暮らし用の住居に住んでいる場合、家族の人数に応じた適切な住居への引っ越しが必要になる場合がある。 ・賃貸契約書の写しや間取り図などで証明する。 |
扶養者の在留資格 | ・扶養者(呼ぶ側)が特定の在留資格を持っていること。 例: 「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「文化活動」「留学」、および「特定技能2号」。 ・「特定技能1号」や「技能実習」は原則として家族滞在の対象外。ただし、留学生から特定技能1号へ変更した場合は、家族を「特定活動」ビザに変更できる特例がある。 |
家族滞在ビザの「扶養」の概念は、健康保険や税制上の扶養とは異なり、実際に経済的に依存しているかどうかが重視されます。扶養者の収入だけでなく、居住地域の物価や家賃なども考慮されるため、一律の基準はありません。また、成人した子の場合でも、学生であるなど経済的に自立していない事情があれば扶養関係が認められる可能性があります。
家族滞在ビザにおける就労制限

家族滞在ビザは、原則として就労活動が認められていません。しかし、「資格外活動許可」を取得することで、一定の条件のもとで働くことが可能になります。
資格外活動許可の種類と条件
許可の種類 | 就労形態 | 労働時間制限 | 業務内容制限 |
包括許可 | アルバイトやパートなど、勤務先や業務内容が特定されない活動。 | 週28時間以内。 | 法令違反の活動、風俗営業、性風俗営業等は禁止。 |
個別許可 | 個人事業主やフリーランス、業務委託契約など、労働時間を客観的に確認できない活動。 | 規定なし(ただし扶養枠を超える収入は不可) | 特定の就労先・業務内容を指定。単純労働は原則認められない。 |
◇ 包括許可
コンビニ店員、飲食店ホールスタッフ、オンラインショップ、WEBデザイナー、イラストレーター、翻訳など、時給で働く場合は包括許可が適しています。この許可は勤務先が決まっていない段階でも申請でき、許可期間中に就労先を変更することも可能です。
◇ 個別許可
1件ごとに報酬が決まる業務や、業務委託契約・請負契約を結んで行う働き方は個別許可に準ずる活動と考えられます。一度許可された就労先や業務内容を変更する際は、再申請が必要です。
◇ 報酬制限
包括許可でも個別許可でも報酬額に上限はありませんが、扶養者の扶養を受けなくても生活できるほどの所得を得られるようになると、「家族滞在」の在留資格に該当しなくなり、在留資格の変更が必要になります。
就労制限違反の罰則
資格外活動許可の条件(特に週28時間の制限)を超えて就労した場合、それは「不法就労」となり、外国人本人には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられる可能性があります。
また、在留資格の更新や変更申請が不許可になるリスクがあり、最悪の場合、退去強制(強制送還)となることもあります。退去強制された場合、その後5年間は日本への入国が制限されます。
家族滞在ビザ保持者を雇用する際の注意点

企業が家族滞在ビザを持つ外国人を雇用する際には、以下の点に特に注意が必要です。
◇ 資格外活動許可の有無と内容の確認
雇用する前に、必ず本人が有効な資格外活動許可を取得しているか確認してください。
◇ 在留カードの確認
・在留カードが本人のものであるか。
・在留資格が「家族滞在」であるか。
・在留期限が切れていないか。
・偽造カードではないか。
◇ 労働時間の厳守
・包括許可の場合は、週28時間以内の労働時間を厳守させることが必須です。
・労働時間を超過させると、企業側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、あるいはその両方)。
◇ 活動内容の制限
・法令違反の活動や、風俗営業、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業、無店舗型電話異性紹介営業への従事は禁止されています。
・「知らなかった」では済まされないため、雇用前にきちんと確認することが重要です。
◇ 雇用形態の制限
・週28時間以内であれば、アルバイトだけでなく契約社員として雇用することも可能です。フルタイムの正社員として雇用することは困難です。
◇ 就労ビザへの変更の必要性
・もし週28時間の制限を超えて働かせたい場合や、扶養枠を外れるほどの収入を得るようになった場合は、就労ビザ(例:「技術・人文知識・国際業務」ビザ)「経営・管理」ビザ、「特定技能」ビザ、「定住者」ビザなど、適切なビザへの変更が必要になります。
・就労ビザへの切り替えには、申請者の学歴や職務経験、職務内容と関連性が審査されます。
◇ 扶養関係の喪失時の対応
・扶養者と離婚した場合など、扶養関係がなくなると家族滞在ビザの要件を満たさなくなるため、引き続き日本に滞在し働きたい場合は、別の在留資格(例:就労ビザ、定住者ビザなど)への変更手続きが必須となります。手続きを行わないと不法滞在となり、企業も不法就労助長罪に問われる可能性があります。
企業側が家族滞在ビザを持つ外国人材を雇用する際は、これらの法律上の制限と注意点を事前にしっかりと把握し、遵守することが重要です。適切に対応することで、外国人材の安定した定着にもつながります。
ご参考:家族滞在ビザの説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。
ご参考:身分系ビザ(配偶者|定住者|永住者)の説明動画
配偶者ビザ
定住者ビザ
永住者ビザ
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