
「日本人の配偶者等」という在留資格(いわゆる「配偶者ビザ」)を持って日本に住んでいる外国人の皆さん、またはこれから取得を目指す皆さんの中には、「日本で働くことはできるの?」「仕事の種類に制限はあるの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言うと、配偶者ビザには原則として就労に関する制限がありません。しかし、いくつか注意点もあります。今回は、配偶者ビザでの就労について、その自由度と注意点を、他のビザと比較しながら説明します。
配偶者ビザは就労制限がない! 自由な働き方が可能
配偶者ビザは、日本人または永住者と結婚した外国人に与えられる在留資格で、就労に関する活動制限がない、非常に包括的なビザです。具体的には、以下のような点で働く上での自由度が高いと言えます。
◇ 職種に制限がない
専門的な資格や学歴を問わず、様々な職種に就くことができます。コンビニエンスストアでのレジ打ちや工場勤務なども可能です。
◇ 雇用形態や就労時間に制限がない
フルタイムはもちろん、パートタイムやアルバイトとして働くことも自由です。複数の仕事を掛け持ちすることも可能です。
◇ 起業や自営業も可能
◇ 職種を変更しても、入国管理局への届出は不要
このように、配偶者ビザを持つ外国人は、日本人とほぼ同等に働くことができる高い自由度を持っています。これは、外国人配偶者が日本社会で経済的に自立し、社会に参加する機会を広く提供するものです。
家族滞在ビザとの大きな違い
配偶者ビザの就労に関する大きなメリットは、他の扶養を受けるビザである「家族滞在ビザ」と比較すると、より明確になります。
家族滞在ビザは、就労ビザなどで日本に滞在する外国人の扶養家族(配偶者や子)に与えられるビザですが、原則として就労は認められていません。働くためには別途「資格外活動許可」を取得する必要があり、許可を得ても週28時間以内という就労時間の制限があります。また、職種にも制限があり、資格外活動許可ではパブやスナック、風俗営業店等で働くことはできません。配偶者ビザと家族滞在ビザの就労制限に関する違いをまとめると、以下の表のようになります。
配偶者ビザ | 家族滞在ビザ | |
就労制限 | なし | あり(資格外活動許可が必要) |
労働時間 | 制限なし | 週28時間以内(資格外活動許可時) |
職種制限 | 制限なし(ただし風俗営業等で更新が難しくなる可能性あり) | 制限あり(風俗営業等不可など) |
配偶者ビザで働く際の注意点
就労制限がない配偶者ビザですが、いくつか知っておくべき注意点があります。
◇ 就労の義務はないが、世帯収入は重要
配偶者ビザには就労の義務はありません。働かなくても問題ありませんが、配偶者ビザの本旨は「日本人配偶者との生活の維持」であり、世帯全体で日本での生活を継続するだけの収入を確保できていることが重要です。夫婦どちらも無職で収入がない場合、ビザの更新が難しくなる可能性があります。
審査の実態としては、単身者の場合で年収300万円以上が必要という目安があり、扶養する配偶者や子がいる場合には、扶養者一人あたり50万円が加算されることが目安とされています。例えば、配偶者を扶養している場合は年収350万円以上、配偶者と子1名を扶養している場合は年収400万円以上が目安となります。金額よりも、その世帯が継続して生活できる収入があるかどうかが重視されると考えられます。
◇ 風俗営業等の職種には注意が必要
法律上、配偶者ビザで風俗営業等の業務に就くことが直接禁止されているわけではありません。しかし、これらの業務に従事している場合、在留資格の更新が難しくなる可能性は否定できません。
これは、在留資格の本旨である「日本人配偶者との生活の維持」から見て、「日本で夫婦として普通の生活を送るのに、なぜわざわざその仕事に就く必要があるのか」という疑問を持たれ、出稼ぎのための偽装結婚などの疑念を抱かれやすくなる可能性があるためです。
もし家計の都合でどうしてもこれらの仕事に就く必要がある場合は、更新時に入国管理局に理由書などで詳細な説明を行う必要があります。
◇ 税金や年金などの公的義務の履行
永住許可申請の際にも重視される点ですが、配偶者ビザの更新においても、住民税や健康保険料、年金保険料などの公的義務を適正に履行しているかが審査されます。滞納や遅延があると、更新が難しくなる可能性があります。
まとめ
配偶者ビザは、日本人または永住者と結婚した外国人に与えられる在留資格であり、就労に関する活動制限がありません。職種、雇用形態、就労時間において非常に自由度が高く、起業することも可能です。これは、就労に制限がある家族滞在ビザとは大きく異なる点です。
ただし、この自由度の高さは、あくまで「日本人配偶者との生活の維持」という配偶者ビザの本来の目的を前提としています。働く上では、世帯全体で安定した生計を立てられるだけの収入があることが重要であり、特に風俗営業等の職種については、在留資格の本旨に照らして慎重な判断が必要です。また、税金や年金などの公的義務を適切に履行することも求められます。
ご参考:身分系ビザ(配偶者|定住者|永住者)の説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。
配偶者ビザ
定住者ビザ
永住者ビザ
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所は外国人のビザ申請をサポートしています。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。