日本で会社を経営する外国人にとって、永住権は安定した生活と事業継続の基盤となります。
経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)を持つ方が、永住権を取得するための要件、手続きの流れ、注意点を分かりやすく説明します。
永住権取得の基本要件

永住権を取得するためには、以下の3つの基本要件を満たす必要があります。
素行が善良であること
◇ 法律を守り、社会的に非難されるような行為がないこと。
◇ 過去に懲役、禁錮、罰金などの刑罰を受けていないこと。
◇ 交通違反や資格外活動など、軽微な違反を繰り返していないこと。
独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
◇ 日常生活において、公的支援に頼らずに生活できること。
◇ 安定した収入があること。経営者の場合、年収300万円以上が目安。扶養家族がいる場合は、1人につき70〜80万円程度加算される。
◇ 経営する会社の経営状況が安定していること。直近2年間の決算が黒字であることが望ましい。
その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
◇ 引き続き10年以上日本に在留していること。
◇ そのうち、就労可能な在留資格(経営・管理ビザを含む)で5年以上在留していること。
◇ 納税義務などの公的義務を果たしていること。
◇ 社会保険に加入していること。
◇ 現に有している在留資格で最長の在留期間をもって在留していること。経営管理ビザの場合は、3年以上が目安。
◇ 公衆衛生上有害となるおそれがないこと。
身元保証人がいること
◇ 身元保証人は、通常、日本に居住する日本人、永住者、または特別永住者である必要があります。
◇ 安定した収入(年収目安300万円以上)があり、納税義務を適切に履行していることが求められます。
◇ 身元保証人の責任は、滞在費、帰国費用、法令遵守に関する道義的なものであり、経済的な賠償責任は含まれません。
👉経営管理ビザからの永住権取得には、日本に10年以上在留し5年以上就労(経営管理ビザを含む)し、会社の黒字経営、社会保険加入、年収300万円以上が必須
👉納税義務履行、素行善良、身元保証人も求められます。
経営管理ビザ特有のポイント

経営管理ビザをお持ちの方が永住権を目指す上で、2025年10月16日に施行される法改正は、永住許可審査において「経営の安定性・継続性」と「法令遵守」の基準を大幅に厳格化させるため、極めて重要です。
この改正により、施行日以降の永住許可申請では、経営・管理ビザの新しい許可基準(強化された資本金や雇用要件など)に適合していることが事実上の条件となります。永住権取得のために経営管理ビザ保持者が押さえるべき重要なポイントを、法改正の影響を踏まえて以下に示します。
経営管理ビザから永住権を目指すための重要ポイント
| 審査項目 | 2025年10月16日施行の新基準 (永住申請の前提) | 永住審査で必須となる実務要件 |
| 事業の財務基盤 | ・資本金3,000万円以上が基本要件となる。 | ・3期連続の黒字決算を目指し、債務超過を解消すること。 |
| 経営の実体性 | ・日本人等の常勤職員1名以上の雇用が必須化。 | ・従業員の雇用契約書や社会保険加入の整備。 ・事業計画の専門家(中小企業診断士等)による評価推奨。 |
| 法令遵守(公的義務) | ・新基準への適合が求められる。 | ・法人税、個人住民税、社会保険料等を期限内に納付すること(滞納・遅延は原則不許可)。 ・法人であれ社長一人の会社であれ、社会保険への加入は必須。 |
| 経営者個人の収入 | ・経営経験3年以上または経営系学位(修士以上)の保有を推奨。 | ・役員報酬は年間300万円以上を目安に安定的に受け取る(扶養家族に応じて加算が必要)。 |
| 在留期間 | ・現に有する在留期間が最長の在留期間(5年または運用上3年)であること。 | ・引き続き10年以上日本に在留し、うち5年以上は就労資格(経営管理等)で在留していること。 |
重要な留意点
◇ 事業の安定性証明の強化
永住審査では、会社の継続的な収益が最も重視され、赤字や債務超過が続くと「安定した生活基盤」がないと見なされる可能性があります。起業直後の場合は、事業が安定し、黒字経営が2年以上経過した後に申請することが望ましいです。
◇ 公的義務の徹底
法改正後も、法人および個人の納税や社会保険の適正な履行は「国益適合要件」の最重要判断材料であり、納期限の遵守が求められます。
◇ 長期出国リスク
正当な理由なく年間183日以上または1回の出国が3か月以上ある場合、「日本に活動の本拠がない」と判断され、永住許可が難しくなる可能性があります。
◇ 高度専門職との関係
永住までの期間を短縮できる「高度専門職1号ハ」を利用している場合でも、2025年10月16日以降に永住申請を行う際は、経営管理ビザの新基準を満たしている必要があります。
永住を目指す経営者は、改正後の厳しい基準を踏まえ、事業基盤の強化(増資や常勤職員の雇用)と、税務・社会保険の透明化を早期に進める必要があります。
👉2025年10月16日施行の法改正により、永住申請には経営管理ビザの新基準(資本金3千万円、常勤職員1名雇用など)に適合し、黒字継続と公的義務の期日内履行が必須です
永住権取得の手続きの流れ
1.必要書類の準備
申請書、パスポート、在留カード、住民票、納税証明書、会社の決算書類など。
2.出入国在留管理局への申請
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に申請。
3.審査
入国管理局による審査。
審査期間は半年から1年程度かかることが多い。
4.結果通知
審査結果が通知されます。
許可された場合は、永住者としての在留カードが交付される。
👉必要書類を準備して出入国在留管理局へ申請し、審査を経て、許可された場合は手数料を納付して在留カードを切り替えます
申請における注意点
経営管理ビザから永住権の取得申請には、審査期間と不許可時の対応に注意が必要です。
◇ 審査期間
出入国在留管理庁が示す標準処理期間は4ヶ月ですが、実際の審査は半年から1年程度かかるのが一般的です。特に東京や大阪などの大都市圏では、1年以上を要する場合もあり、長期化傾向が続いています。提出書類の不備や入管窓口の混雑状況によって期間が変動します。
◇ 不許可の場合
申請が不許可になっても、現在の経営管理ビザには影響せず、何回でも再申請が可能です。不許可の際は、まず入管を訪問し、担当審査官から詳細な理由を正確に確認することが重要です。その理由に基づき具体的な対策を検討し、改善点や新たな情報を盛り込んで再申請を準備します。
👉不許可でも現在のビザに影響はなく再申請可能
高度人材ポイント制の活用

経営管理ビザをお持ちの外国人が永住権(永住者ビザ)の取得を目指す際、高度人材ポイント制を活用すると、通常の永住許可要件である「原則として引き続き10年以上日本に在留」という期間が短縮される特例が適用されます。
この制度における「70点以上」と「80点以上」のそれぞれの条件は以下の通りです。
◇ 70点以上の場合
・永住許可申請日から3年前の時点および申請時において、高度専門職省令に規定するポイント計算で70点以上を有していると認められる必要があります。
・この条件を満たしていれば、3年以上継続して日本に在留していれば永住申請が可能です。
◇ 80点以上の場合
・永住許可申請日から1年前の時点および申請時において、高度専門職省令に規定するポイント計算で80点以上を有していると認められる必要があります。
・この条件を満たしていれば、1年間継続して日本に在留していれば永住申請が可能です。
この高度人材ポイント制を利用する最大のメリットは、永住許可の審査が迅速に進み、より早期に永住許可を取得できる可能性が高まる点です。経営管理ビザを持つ申請者の場合、経営管理に関する専門職学位(MBAなど)の保有、年収、役職などがポイント加算の評価項目となります。
👉70点以上で3年、80点以上で1年の在留期間で永住申請が可能
まとめ
経営管理ビザからの永住権取得には、以下のポイントが重要です。
まず、素行が善良であること、独立して生計を営める資産や技能があること(役員報酬は年300万円以上が目安)、そして日本の利益に合致することが原則要件です。特に経営管理ビザの場合、会社の直近2期以上の黒字決算(債務超過でないこと)と、会社と個人の社会保険への適正加入・納付が厳しく審査されます。
在留期間は原則10年以上(うち就労資格で5年以上、転職や異なる就労ビザの合算も可)が必要です。現に有するビザが最長期間(現在3年)であることも求められます。海外への長期出国(年間100日または1回3ヶ月以上)は不利になり得ます。
高度人材ポイント制を活用すると、70点以上で3年、80点以上で1年の継続在留で申請できる特例があります。永住申請には身元保証人も必要です。
経営管理ビザから永住権を取得するためには、事業の安定性と継続性、法令遵守が不可欠です。計画的に準備を進め、永住権の取得を目指しましょう。
名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所は外国人のビザ申請をサポートしています。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。
ご参考:経営管理ビザの説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。
ご参考:身分系ビザ(永住者|配偶者|定住者)の説明動画
ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。
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