外国人ITエンジニアの就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」取得

外国人ITエンジニアが日本で適法に仕事をするために一般的に取得するのは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格です。この在留資格は、システムエンジニア、プログラマー、AIスペシャリスト、データサイエンティストなど、ホワイトカラーの専門職に従事する外国人を対象としています。IT分野の業務は、理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に該当します。

「技術・人文知識・国際業務」の取得要件

ITエンジニアが「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国ビザ)を取得するためには、主に以下の3つの要件を満たす必要があります。

要件カテゴリ必須条件具体的な要件連情報
専門性(学歴・職歴・資格)専門的な技術または知識を保有していること(いずれか一つを満たす大学/専門学校の卒業
大学(国内外問わず)を卒業していること、または日本の専門学校を卒業し「専門士」等の学位を有していること。

10年以上の実務経験
関連する業務について10年以上の実務経験があること(大学等で関連科目を専攻した期間を含む)。

IT告示に基づく資格
法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する試験に合格、または資格を有していること。
・IT告示の資格は、学歴・職歴要件を免除する優遇措置となる。
業務内容の適合性契約に基づく活動が在留資格の範囲内であること業務内容が理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務であること(プログラミング、システム開発、ネットワーク構築など)。単純労働は不可。・雇用契約書や雇用理由書で、具体的な業務内容を明確に記載することが重要。
報酬の適正性安定した生活を営める報酬を得ること日本人が同種の業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。・最低賃金クリアだけでなく、専門職に見合った報酬が求められる。

就労ビザ取得で優遇されるIT資格(IT告示)

ITエンジニアが日本で「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)を取得する際、特定のIT資格を有していれば、通常求められる学歴要件や10年以上の実務経験要件が免除されるという優遇措置が適用されます。この優遇措置の対象となる資格は、法務大臣が告示で定める情報処理技術に関する試験または資格(IT告示)に基づいています。

IT告示は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がアジア各国との連携を強化し、国境を越えた質の高いIT人材の確保や流動化を図るために、相互認証を行っている諸外国の試験や資格の一部を対象として規定しているものです。

IT告示の対象となる主な資格

IT告示の対象には、日本国内の試験のほか、中国、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシア、タイ、モンゴル、バングラデシュ、シンガポール、韓国において実施された試験等が含まれます。以下に、IT告示の対象となる主な国と資格を示します。

国・地域試験・資格名(抜粋)実施機関/認定機関
日本・情報処理安全確保支援士試験

・ITストラテジスト試験

・応用情報技術者試験

・基本情報技術者試験 など
・経済産業大臣(情報処理の促進に関する法律に基づく)
バングラデシュ・基本情報技術者(ファンダメンタル・インフォメーション・テクノロジー・エンジニア)試験

・応用情報技術者(アプライド・インフォメーション・テクノロジー・エンジニア)試験
・バングラデシュコンピュータ評議会(BCC)
中国・系統分析師(システム・アナリスト)

・程序員(プログラマ)

・軟件設計師(ソフトウェア設計エンジニア) など
・中国工業和信息化部教育与考試中心
フィリピン・基本情報技術者試験

・応用情報技術者試験
・PhilNITS(フィリピン国家情報技術標準財団) など
ベトナム・基本情報技術者試験

・応用情報技術者試験

・ソフトウェア開発技術者試験 など
・ベトナム訓練試験センター(VITEC) など
韓国・情報処理技師

・情報処理産業技師
・韓国産業人力公団
インド・DOEACC制度の資格(レベルA、B、C)・NIELITなど(以前のDOEACC)

就労ビザの申請方法

申請手続きは、申請者が現在「海外」にいるか、「日本国内」にすでに在留しているかによって、大きく二つのパターンに分かれます。

海外在住のエンジニアを呼び寄せる場合(新規申請)

これから日本に入国しようとする外国人ITエンジニアが就労を開始するための手順です。

ステップ手続きと概要注意点
1. 雇用契約の締結・就労ビザ取得のため、まず日本の企業と正式な雇用契約を締結します。

・職種、業務内容、給与、勤務時間、契約期間などの労働条件を明確に記した契約書が必要です。
・雇用契約書が作成されていない場合でも、業務内容や給与などの労働条件が明示された書類(労働条件明示書等)の提出が必要となります。
2. 在留資格認定証明書交付申請・雇用先企業(多くは代理人として)が、外国人本人の代わりに企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に申請を行います。・就業開始に間に合うよう、余裕を持って申請を進める必要があります。
3. 審査・交付・審査に問題がないと判断されると、在留資格認定証明書が発行されます。

・企業は交付された証明書を速やかに本人に送付します。
・認定証明書の有効期限は発行より3ヶ月間です。この期間内に入国手続きを完了させる必要があります。
4. ビザ(査証)申請・入国・外国人本人が在留資格認定証明書と必要な書類を揃え、海外の日本大使館・領事館でビザ(査証)の発給申請を行います。

・ビザ発給後、来日し、在留カードを得て就労開始します。
・ビザ(査証)とは、日本への入国を許可する書類であり、在外日本公館が発行します。

日本国内在住者が在留資格を切り替える場合

すでに日本に在留している外国人(例:留学生など)が、ITエンジニアとして就労するために在留資格を切り替える(変更する)手順です。

ステップ手続きと概要注意点
1. 雇用契約の締結・在留カードの確認・企業は外国人労働者の在留カードを確認し、就労資格の取得を条件とする停止条件付き雇用契約を締結することが考えられます。・留学生など非就労資格からの切り替えの場合、卒業見込みの時点で申請を受け付けていますが、許可は卒業証明書提出後になります。
2. 在留資格変更許可申請・住所地を管轄する地方出入国在留管理局の窓口で申請を行います。・申請時期や場所によって大きく変動し、東京入管では5か月以上かかるケースも少なくありません。
3. 審査・許可・審査を経て、在留資格変更が許可されます。在留資格変更が許可され、新しい在留カードを受け取ってから初めて就労を開始できます。

・許可が下りる前に、報酬を受ける活動に従事することはできません。

もしすでに「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている外国人を採用する場合、業務内容が同じ在留資格の範囲内であれば、「在留資格変更許可申請」は不要です。この場合は、外国人本人による「所属機関に関する届出」を行う必要があります。

申請に必要な主な書類

「技術・人文知識・国際業務」を申請する場合の主要な必要書類を示します。

書類区分書類名概要・用途海外在住者(新規申請)国内在住者(資格変更)
申請者本人書類在留資格申請書申請人等作成用の部分(1枚目、2枚目)を記載。必須必須
証明写真、旅券写真(4cm×3cm)1葉と旅券(パスポート)。必須必須
在留カード日本国内で在留資格を変更する場合に必要。不要必須
在留資格認定証明書新規申請の場合、原本および写しを通。必須不要
学歴・職歴証明書類卒業証明書、学位取得の証明書、職歴・経歴を示す文書(職務経歴書)など。必須必須
所属機関(企業)書類雇用契約書/労働条件通知書業務内容、給与、雇用予定期間などの労働条件が明示された書類必須必須
会社概要が分かる資料履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、直近年度の決算文書の写し、会社のパンフレット等。必須必須
カテゴリー証明書類前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票等(企業のカテゴリー分けの判断に必要)。必須必須

※申請者の国籍や所属機関の規模(カテゴリー)によっては、上記以外の書類が必要となることがあります。

「技術・人文知識・国際業務」以外の在留資格

ITエンジニアが日本で働くために必要な在留資格として、一般的に取得される「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)以外にも、以下の在留資格があります。

在留資格の分類資格名概要とITエンジニアとの関連性就労制限
高度専門職高度専門職1号ロ・高度な専門技術や知識を持つ外国人向け。学歴・職歴・年収等の評価項目に基づく「高度人材ポイント制」で70点以上を獲得する必要がある。制限なし(優遇措置あり)
身分系永住者/日本人の配偶者等/定住者・日本での生活や特定の身分(結婚など)が認められている外国人向け。就労活動に制限なし
その他資格外活動許可・留学生や家族滞在ビザを持つ外国人が、本来の資格外の活動(アルバイト)を行うための許可。週28時間以内の制限あり(風俗営業等は禁止)
企業内転勤・国外の企業から日本の関連会社へ転勤する際に利用される。所属機関での活動に限る
特定活動・デジタルノマドビザを含む特別な活動を行うためのビザ。

・内定待機者用(大学等卒業後就職までの期間)の特定活動も存在する。
個別に指定される活動に限る

就労ビザ取得・雇用における注意点

不許可になった場合の対応

就労ビザの審査は年々厳しくなっており、不許可になる可能性もあります。 不許可となった場合でも再申請は可能ですが、安易な再申請は避けるべきです。

◇ 不許可理由の確認
再申請を行う前に、必ず入国管理局に出向き、不許可理由の説明を受けることが極めて重要です。

◇ 対策と再申請
不許可理由(例:学歴や業務内容の関連性不足、提出資料の不備、報酬額の不適合など)を正確に把握し、その問題を解消するための具体的な対策を講じた上で再申請に臨む必要があります。

雇用契約と業務内容に関する注意点

◇ 契約の明確化
外国人を雇用する際は、労働契約を明確化することが重要です。特に、雇用形態、給与体系、契約更新条件、ビザ関連のサポートの有無などを明確に説明しましょう。

◇ OJT/研修の制限
採用当初の業務習熟のためのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は認められますが、その期間が在留期間の大半を占めるような場合、在留資格に該当しない活動と見なされ、認められません。

在留資格の維持と管理

◇ 在留期間の更新
外国人労働者が日本で働き続けるには、定期的なビザ(在留資格)の更新が必要です。企業は更新期限を管理し、必要な書類準備や手続きのサポートを積極的に行うべきです。

◇ 届出の義務
中長期在留者である外国人エンジニアは、在留カードの記載事項の届出や、所属機関(雇用先)に変更があった場合の届出など、入管法上の届出の義務を遵守する必要があります。これらの義務を履行していない場合、ビザ更新時に不許可になるリスクがあります。

名古屋市のOSAHIRO行政書士事務所は外国人のビザ申請をサポートしています。ご依頼・ご相談などお気軽にお問い合わせください(初回面談は無料です)。

参考:技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務)説明動画

ビザ申請の概要や注意点を動画でわかりやすくご紹介します。

・「特定活動46号」の申請

・技人国ビザの学歴要件とは?

・留学ビザから就労ビザへの変更手続き

・技人国ビザ申請の注意点

・「技術・人文知識・国際業務ビザ」で働ける職種とは?

・技人国ビザで外国人が飲食店にて就労可能な業務

・”Engineer/Specialist in Humanities/International Service” Visa